【故事成語】
足を重ねて立ち、目を仄てて見る
【読み方】
あしをかさねてたち、めをそばだててみる
【意味】
非常に恐れて身を縮め、相手を正面から見られず横目でうかがうさま。


【英語】
・cower in fear(恐怖で身を縮める)
【類義語】
・戦戦兢兢(せんせんきょうきょう)
・蛇に睨まれた蛙(へびににらまれたカエル)
【対義語】
・泰然自若(たいぜんじじゃく)
・大胆不敵(だいたんふてき)
「足を重ねて立ち、目を仄てて見る」の故事
この故事成語のもとになる形は、中国の古い歴史書『史記』の「汲黯」について述べた部分に出てくる「重足而立,側目而視」という言い方です。「重足」は、両足を重ねるようにして立つこと、「側目」は、目をそばめて横から見ることを表し、どちらも心がのびのびせず、恐れで体を小さくしている姿を示しています。
『史記』のこの場面には、汲黯(きゅうあん)と張湯(ちょうとう)が出てきます。汲黯は前漢の武帝に仕えた直言の臣で、張湯は法律や刑罰を扱う廷尉(ていい)として力を
張湯が律令を改めて廷尉を務めていたとき、汲黯は、張湯の政治が細かく厳しすぎ、人々を罪に落とし入れるようになることを強く責めました。その怒りの中で、汲黯は「張湯のような者が政治を行えば、天下の人々は足を重ねて立ち、横目で見るように
この言葉は、単に一人の人が怖がっている様子を描いたものではありません。もとの文脈では、厳しすぎる法の運用や、権力を持つ役人への恐れによって、人々が自由にものを言えず、正面から相手を見ることさえできなくなるありさまを
のちに『漢書』にも同じ内容の場面が収められますが、そこでは「側目而視」ではなく「仄目而視」という形が用いられています。「仄目而視」は、斜めに目を向けて見ることを表し、恐れや憎しみを含む横目の態
日本語では、この漢文の表現を訓読して、「足を重ねて立ち、目を側てて見る」「足を重ねて立ち、目を側てて視る」などの形で説明されてきました。対象語の「仄てて」は、『漢書』に出る「仄目」の表記とつながる形で、いずれも正面から相手を見られず、恐れて横目でうかがう姿を表しています。
現在の意味では、古い政治批判の文脈から離れても、強い相手や怖い相手の前で身をすくめるような状態を表す故事成語として用いられます。足をそろえて動けず、目もまっすぐ向けられないという具体的な体の様子が、心の恐れを分かりやすく伝えている表現です。
「足を重ねて立ち、目を仄てて見る」の使い方




「足を重ねて立ち、目を仄てて見る」の例文
- 厳しすぎる監督を前に、選手たちは足を重ねて立ち、目を仄てて見るような態度になった。
- 部長の強い叱責を受け、会議室の新入社員は足を重ねて立ち、目を仄てて見るばかりだった。
- 近所で評判の怖い犬がうなり声を上げ、子どもたちは足を重ねて立ち、目を仄てて見るように固まった。
- 先生が静かに怒っていると分かり、教室の空気は足を重ねて立ち、目を仄てて見るように張りつめた。
- 強い権限を持つ相手に囲まれ、彼は足を重ねて立ち、目を仄てて見るような気持ちで説明を続けた。
- 家族の大切な約束を破った弟は、父の前で足を重ねて立ち、目を仄てて見るように小さくなっていた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・司馬遷『史記』。
・班固『漢書』。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionry』Merriam-Webster。























