【ことわざ】
後の雁が先になる
【読み方】
あとのかりがさきになる(あとのがんがさきになるとも読む)
【意味】
後から来た者や後輩が、先にいた者や先輩を追い越すこと。また、若い者が年長者より先に亡くなることにもいう。


【類義語】
・後の舟かえって先になる(あとのふねかえってさきになる)
「後の雁が先になる」の語源・由来
「後の雁が先になる」は、雁が空を列になって飛ぶ姿をもとにしたことわざです。雁が列や斜めの形をつくって進む様子は「雁行(がんこう)」と呼ばれ、空を飛ぶ雁の列、また斜めに並んで進むことを表す言葉として使われてきました。
雁の列には前と後ろの位置があります。そこから、後ろにいた雁が先へ出る姿を、人の世であとに来た者が先にいた者を追い越すことに重ねた表現になりました。鉤(かぎ)のような形になって飛ぶ雁の様子から、後から来た者が先に行った者を追い越す状態をいう、という説明とも合います。
古い用例として、江戸時代の俳文集『鶉衣(うずらごろも)』(1787年・江戸時代後期、横井也有著)に、「跡の雁先へとはたが秋の空」という句があります。秋空を渡る雁の前後が入れ替わる姿を、人の順序が入れ替わることへ結びつける発想が、短い句の中に表れています。
この古い用例では、現在の「後の雁が先になる」とまったく同じ形ではなく、「跡の雁」「先へ」という近い形で出てきます。古い表記には「跡の雁」とあり、現在のことわざとしては「後の雁が先になる」という形で広く示されます。
また、江戸時代後期の黄表紙(きびょうし)『啌多雁取帳(うそしっかりがんとりちょう)』(1783年・江戸時代後期、奈蒔野馬乎人作、喜多川歌麿画)も、このことわざに関わる作品として知られます。黄表紙は、江戸時代中期以後に多く出た、絵を主とする小説の一様式で、『啌多雁取帳』は雁を題材にした奇想の物語です。
このように、はじめは雁の列という具体的な自然の姿から出発し、やがて人間社会の順序の逆転を言い表すことわざとして定着しました。現在では、後輩が学識・地位・力量・財産などで先輩をしのぐ場合に使うほか、若い者が年長者より先に亡くなるという、悲しみを含む場面にも用います。
「後の雁が先になる」の使い方




「後の雁が先になる」の例文
- 入社は遅かった後輩が先に主任になり、後の雁が先になる形となった。
- 一年生のときは補欠だった選手が三年生で主将に選ばれ、後の雁が先になると周囲を驚かせた。
- 弟子の研究が師の成果を越え、後の雁が先になる例として語られた。
- 開店の遅れた小さな店が評判を集め、古くからの店を売り上げで抜いたのは後の雁が先になるというものだ。
- 祖父より若い叔父が先に亡くなり、親戚は後の雁が先になると深く嘆いた。
- 新しく参加した班員が難しい問題を解き、後の雁が先になるように班を引っ張った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館『大辞泉』編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・横井也有『鶉衣』1787年。
・奈蒔野馬乎人作、喜多川歌麿画『啌多雁取帳』1783年。























