【ことわざ】
一鶏鳴けば万鶏歌う
【読み方】
いっけいなけばばんけいうたう
【意味】
一人の意見や行動につられて、多くの人が安易に同調し、その考えや動きが広がっていくことのたとえ。


【英語】
・When one goose drinks, all drink(一羽が飲めば、みな飲む)
【類義語】
・付和雷同(ふわらいどう)
・一犬虚に吠ゆれば万犬実に伝う(いっけんきょにほゆればばんけんじつにつたう)
【対義語】
・独立独歩(どくりつどっぽ)
「一鶏鳴けば万鶏歌う」の語源・由来
「一鶏鳴けば万鶏歌う」は、鶏の鳴き声が一羽から周囲へ広がっていく様子を、人間社会の同調に重ねたことわざです。一羽が鳴くと、ほかの鶏もつられて鳴き出すという具体的な光景から、一人の意見や行動に多くの人が軽くついていくことを表すようになりました。
このことわざでは、「歌う」が「鳴く」の意味で使われています。「歌う」には、音楽として声を出す意味だけでなく、鳥などがさえずる、鳴くという意味もあります。とくに古い用法では、鶏が時を告げることを「うたう」と表すこともありました。
古い漢文調の形としては、『藤氏醫談(とうしいだん)』(1803年・江戸時代後期、近藤隆昌著)に、「古曰。草蟲鳴則阜螽躍。一雞鳴則萬雞鳴。」という一節が出てきます。ここでは、一つの鳴き声にほかのものが応じるたとえとして、「一雞鳴則萬雞鳴」という形が用いられています。
『藤氏醫談』の文脈では、ある人々が新しい考え方を唱えると、それに続く人々が現れ、一時に広まる様子を述べるところにこの表現が置かれています。つまり、単に鶏の鳴き声を描いただけではなく、ある声に周囲が次々と反応する社会の動きを、鶏の連鎖的な鳴き声で言い表しているのです。
現在の形では、「一雞」「萬雞」の漢字が日本の常用的な表記に近い「一鶏」「万鶏」となり、終わりの「鳴く」にあたる部分が「歌う」と表されます。「歌う」は鳥が鳴く意味を持つため、「万鶏歌う」は「多くの鶏が声を合わせて鳴く」という意味として無理なく読めます。
このことわざの大切な点は、「影響力がある人をほめる表現」ではなく、「考えずに同調する危うさ」を示す表現であることです。最初の一声が正しいかどうかを確かめず、まわりがいっせいに同じ方向へ動くと、誤った意見やうわさまで大きく広がってしまうことがあります。
そのため、「一鶏鳴けば万鶏歌う」は、集団の中で声の大きい意見や流行にすぐ流される場面に向いたことわざです。人の意見を聞くことは大切ですが、このことわざは、聞いたあとに自分で確かめ、考えることの大切さも静かに教えています。
「一鶏鳴けば万鶏歌う」の使い方




「一鶏鳴けば万鶏歌う」の例文
- 有名人の一言に多くの人がすぐ賛成し、一鶏鳴けば万鶏歌うように同じ意見が広がった。
- 根拠のないうわさがクラス中に広まったのは、一鶏鳴けば万鶏歌うの典型だ。
- 一鶏鳴けば万鶏歌うにならないよう、会議では少数意見にも耳を傾ける必要がある。
- 店の前に行列ができると、理由を知らない人まで並び始め、一鶏鳴けば万鶏歌うのような状態になった。
- 友人の投稿を確かめずに広めると、一鶏鳴けば万鶏歌うで誤情報を大きくしてしまう。
- 一鶏鳴けば万鶏歌うを避けるため、新聞部は情報の出どころを調べてから記事にした。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近藤隆昌『藤氏醫談』1803年。
・小沢愛圀・山本文之助・増井一彦『英語諺語辞典』篠崎書林、1971年。























