【ことわざ】
一銭を笑う者は一銭に泣く
【読み方】
いっせんをわらうものはいっせんになく
【意味】
わずかな金額だといって軽く見る者は、やがてそのわずかな金額に困ることになるという戒め。たとえ少額でも、金銭を粗末にしてはいけないという意味。


【英語】
・Take care of the pennies and the pounds will take care of themselves(小さなお金を大切にすれば、大きなお金も自然に整っていく)
【類義語】
・一円を笑う者は一円に泣く(いちえんをわらうものはいちえんになく)
・塵も積もれば山となる(ちりもつもればやまとなる)
【対義語】
・湯水のように使う(ゆみずのようにつかう)
「一銭を笑う者は一銭に泣く」の語源・由来
このことわざの「一銭」は、もとは金銭の単位を表す言葉です。明治4年(1871年)の新貨条例で、円の百分の一を銭、銭の十分の一を厘とする制度が定められました。つまり一銭は、一円に比べればごく小さな金額です。
一銭は、1953年(昭和28年)の法律により、実際の紙幣や貨幣としては同年12月31日限りで通用力を失いました。ただし、現在も「銭」と「厘」は、利息や外国為替などで一円未満を表す計算上の単位として残っています。
「一銭を笑う者は一銭に泣く」は、古い中国の故事や昔話から生まれた言葉ではありません。大正8年(1919年)、逓信省(ていしんしょう)為替貯金局が貯蓄をすすめるために標語を公募し、その入選作として広まった表現です。逓信省は、郵便・電信・電話などを扱った国の機関でした。
この標語は、大阪の朝田喜代松が作ったものとして伝わります。二等に選ばれた標語が人々の生活の中に残り、貯蓄をすすめるための言葉から、少額の金銭を粗末にしないよう戒めることわざとして定着していきました。
表現の中の「笑う」は、声を出して笑うことだけでなく、「たかが一銭」とばかにすることを指します。「泣く」は、悲しくて涙を流すというより、その一銭が足りないために困り、後悔することを表します。小さな金額を軽く見る心と、その結果として起こる困りごとを、対になる形で分かりやすく示しているのです。
昭和12年(1937年)初出の太宰治『HUMAN LOST』にも、「一銭を笑い、一銭に殴られた」という形で、このことわざをふまえた言い方が出てきます。ここでは、わずかな金銭を軽く見た者が、その小さなものから痛いしっぺ返しを受けるという意味合いが強く出ています。
のちには、日常の貨幣感覚に合わせて「一円を笑う者は一円に泣く」という形も広く使われるようになりました。本来の形は「一銭」ですが、現在では「一円」と言い換えた形でも、少額を粗末にしてはいけないという同じ教えを表します。
一銭という小さな単位を用いることで、このことわざは「金額の大小ではなく、金銭を大切にする心が大事である」と教えています。大きなむだづかいだけでなく、毎日の小さな出費や、手もとにある一円の扱い方にも目を向けさせるところに、このことわざの力があります。
「一銭を笑う者は一銭に泣く」の使い方




「一銭を笑う者は一銭に泣く」の例文
- 一銭を笑う者は一銭に泣くというから、買い物のあとの一円玉も粗末にしない。
- 毎日少しずつむだづかいをしていると、一銭を笑う者は一銭に泣くことになりかねない。
- 祖父は、一銭を笑う者は一銭に泣くと言って、財布の中の小銭まできちんと数えた。
- 旅行の予算を立てるときは、一銭を笑う者は一銭に泣くという気持ちで、細かな出費も書き出した。
- 会社の経費を扱う以上、一銭を笑う者は一銭に泣くという考えを忘れてはならない。
- 募金箱に入れる小さな硬貨も、一銭を笑う者は一銭に泣くと思えば、大切な一歩に感じられる。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・太宰治『HUMAN LOST』1937年。























