【命は風前の灯の如し】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

命は風前の灯の如し

【故事成語】
命は風前の灯の如し

【読み方】
いのちはふうぜんのともしびのごとし

【意味】
人の命は、風の前に置かれた灯火のように消えやすく、はかないものということ。危険が身に迫って、命が今にも絶えそうなことも表す。

ことわざ博士
「命は風前の灯の如し」は、人生の無常と、生命の危うさを灯火にたとえた表現なんだよ。
助手ねこ
病気・事故・戦乱などで命が危険にさらされている場面や、人の一生のはかなさを述べる場面で用いるニャン。

【英語】
・like a candle in the wind(風の中のろうそくのように、危うくはかないもの)

【類義語】
・風前の灯火(ふうぜんのともしび)
・人生朝露の如し(じんせいちょうろのごとし)
・浮生夢の如し(ふせいゆめのごとし)
・夢幻泡影(むげんほうよう)

【対義語】
・命あっての物種(いのちあってのものだね)
・命どぅ宝(ぬちどぅたから)

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「命は風前の灯の如し」の故事

故事成語を深掘り

「命は風前の灯の如し」は、風に吹かれればすぐに消えてしまう灯火を人の命の危うさに重ねた表現です。もとの形として、「命は風中の灯の如し」という言い方が伝わっています。「風中」は風の中、「風前」は風の当たる前を表し、どちらも灯火が消えやすい場面を示します。

このたとえの背景には、仏教で説かれる無常の考えがあります。『法苑珠林(ほうおんじゅりん)』(唐、668年成立、道世著)は、仏教の思想や儀礼などを項目ごとにまとめ、多くの経論を引用した一〇〇巻の書物です。この表現は、そうした仏教文献の中で、人の命がいつ失われるか分からないことを示すたとえとして受け継がれてきました。

「風中の灯」というたとえは、人の命だけでなく、この世のものごと全体のはかなさを表す言い方としても用いられました。『大智度論』巻三十七には、この世の中のものごとが変わり、滅びていくさまを「風中の灯」のようだとする一節があります。風にさらされた小さな灯が、わずかなきっかけで消えるように、世の中のものも人の命も、安定したものではないという考えです。

日本では、「風前の灯火」という近い形が古くから使われました。『往生講式(おうじょうこうしき)』(1079年ごろ、永観撰)は、極楽往生を願う往生講の作法や講説内容を記した書物で、その古い用例として、「一生是風前之燭、万事皆春夜之夢」とあります。これは、一生は風の前の灯火のようであり、世のすべてのことは春の夜の夢のようにはかないという意味です。

「灯」と「燭」は、どちらも明かりをともすものを表します。はじめは「風中の灯」「風前の燭」「風前の灯火」など、少しずつ異なる形で用いられましたが、いずれも風にさらされた火が今にも消えそうな姿をもとにしています。そのため、人生のはかなさをいう場合にも、危険が迫って命が絶えそうな場合にも、使われるようになりました。

現在の形に近い「命は風前の灯の如し」は、『本朝俚諺(ほんちょうりげん)』(1715年刊、井沢長秀編)にも用例が示されます。この段階では、仏教の無常観から出たたとえが、日本語の中で「人の命は消えやすくたよりない」という意味の成句として定着していたことが分かります。

この故事成語は、命を軽んじる言葉ではありません。むしろ、命が風にゆれる灯火のように危ういからこそ、今ある時間を大切にし、危険な場面では命を守らなければならないという思いを含んでいます。無常を静かに見つめながら、命の重さを考えさせる表現です。

「命は風前の灯の如し」の使い方

健太
ニュースで、大きな事故にあった人がまだ入院しているって聞いたよ。早く元気になってほしいな。
ともこ
本当に心配だね。命は風前の灯の如しというけれど、命は少しのことで危なくなることがあるんだね。
健太
だから、自転車に乗るときも、ちゃんとヘルメットをして交通ルールを守らないといけないね。
ともこ
うん!こわがるだけじゃなくて、命を守る行動をしっかりしたいね。
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「命は風前の灯の如し」の例文

例文
  • 重い病に倒れた父を見舞い、命は風前の灯の如しという言葉の重みを知った。
  • 命は風前の灯の如しだから、危険な川には興味本位で近づかない。
  • 戦乱の中で逃げまどう人々の姿は、命は風前の灯の如しという言葉を思わせる。
  • 祖母は、命は風前の灯の如しと語り、毎日を大切に生きるよう孫に伝えた。
  • 命は風前の灯の如しという思いから、救助隊は一刻も早く現場へ向かった。
  • 人生のはかなさを述べる文章に、命は風前の灯の如しという表現が使われていた。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・道世『法苑珠林』668年成立。
・『大智度論』。
・永観『往生講式』1079年ごろ。
・井沢長秀編『本朝俚諺』1715年。


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