【ことわざ】
一升の餅に五升の取粉
【読み方】
いっしょうのもちにごしょうのとりこ
【意味】
主となるものより、それに付随して必要になるもの・手間・費用のほうが多くなることのたとえ。


【類義語】
・五両で帯買うて三両でくける(ごりょうでおびこうてさんりょうでくける)
「一升の餅に五升の取粉」の語源・由来
このことわざは、餅つきの作業から生まれた生活のたとえです。餅は、ついたあとに板の上へ取り、取粉をつけて手や板に粘りつかないようにしてから、こねたり、丸めたり、伸ばしたりします。その作業では取粉を比較的多く使いますが、「一升の餅に五升の取粉」とまで言うと、主役である餅よりも、添える粉のほうがはるかに多くなるという誇張が生まれます。
「一升」は、尺貫法(しゃっかんほう)の体積の単位で、現在の日本の一升は、江戸時代初期にほぼ定まったと考えられています。一升は斗の十分の一、合の十倍に当たり、約一・八〇三九リットルです。このように、はっきりした量を表す「一升」と「五升」を並べることで、主となるものと付随するものとの差が、読む人に強く伝わる形になっています。
取粉という言葉そのものは、江戸時代前期の俳諧にも出てきます。高瀬梅盛編の俳諧集『口真似草(くちまねぐさ)』(明暦二年〔一六五六年〕刊)には、「雪餠のとり粉なるらし今朝の霜」という句があります。これは、朝の霜の白さを、餅にまぶす取粉に見立てた句で、当時すでに、取粉が身近な生活の道具として知られていたことを示します。
もとの形では、餅と取粉という具体的な物の関係が中心です。餅が主であり、取粉は餅を扱いやすくするための脇役です。しかし、実際の作業では、その脇役がなければ、餅を丸めたり分けたりしにくくなります。そこから、物事を進めるときには、中心となるものだけでなく、それを支える準備や周辺の費用が思いのほか多く必要になる、という意味へ広がりました。
現在の使い方では、餅つきそのものに限らず、買い物、行事、旅行、家づくり、学校や仕事の準備などにも用います。たとえば、本体は安くても部品や送料が高くつく場合や、簡単な計画に見えても道具・人手・手続きが多く必要になる場合に、このことわざがよく当てはまります。主役だけを見ていると見落としやすい「周りに必要なもの」を教える、実際的なことわざです。
「一升の餅に五升の取粉」の使い方




「一升の餅に五升の取粉」の例文
- 小さな花壇を作るだけのはずが、土や支柱や道具代がかさみ、一升の餅に五升の取粉となった。
- 文化祭の看板そのものより、絵の具、養生テープ、予備の板の準備が多く、一升の餅に五升の取粉だった。
- 中古の棚は安かったが、配送費と修理代で一升の餅に五升の取粉になった。
- 町内会の短い案内を配るにも、封筒、印刷、人手が必要で、一升の餅に五升の取粉だと分かった。
- 新しい端末一台よりも、ケース、設定費、周辺機器に費用がかかり、一升の餅に五升の取粉となった。
- 記念品の本体は小さいが、包装、名札、発送の手間が重なって、一升の餅に五升の取粉のような準備になった。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・高瀬梅盛編『口真似草』安田十兵衛、1656年。























