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【出ずる息の入るをも待つべからず】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

出ずる息の入るをも待つべからず

【ことわざ】
出ずる息の入るをも待つべからず

【読み方】
いずるいきのいるをもまつべからず

【意味】
一呼吸するほどの短い間にも、人の命がどうなるか分からないこと。人生のはかなさをたとえる言葉。

ことわざ博士
「出ずる息の入るをも待つべからず」は、吐いた息を再び吸える保証さえないほど、人の命が定めがたいことを表すことわざなんだよ。
助手ねこ
急な病、事故、別れなどを前に、命のはかなさや、今を大切にする心を述べる場面に用いるニャン。

【英語】
・Life is but a breath(人生は一息のようにはかない)

【類義語】
・老少不定(ろうしょうふじょう)
・露の命(つゆのいのち)
・明日ありと思う心の仇桜(あすありとおもうこころのあだざくら)

【対義語】
・不老不死(ふろうふし)

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「出ずる息の入るをも待つべからず」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざは、中国の故事に由来する故事成語ではなく、日本の古典文学と仏教的な無常観の中で用いられてきたことわざです。「出ずる息」は吐き出す息、「入る」は再び息を吸い入れることを表し、吐いた息が次に入るまでのほんの短い間さえ、命は確かなものではないという意味を持ちます。

古い形としては、「出息の入るを待つべからず」という形が伝わっています。「べからず」は古語で「〜してはならない」「〜できるはずがない」という強い否定を表し、ここでは、出た息が次に入ることさえ待てないほど命ははかない、という意味になります。

この言葉の最古級の用例は、『平松家本平家』(13世紀前半ごろ)巻一に見える「出つる息の入をも待つべからず、蜻蛉電光よりも猶はかなし」という形です。ここでは、息の一瞬に続けて、蜻蛉(かげろう)や稲妻よりもなおはかないものとして、人の命が語られています。

『平家物語』は、平安末期から鎌倉初期にかけての源平争乱を描いた軍記物語です。成立については一つに定めにくいところがありますが、遅くとも1240年ごろには『治承物語』とも呼ばれた六巻本があったと考えられています。

このことわざが出てくる場面は、『平家物語』巻第一の「祇王(ぎおう)」の話と深く結びついています。祇王は平清盛(たいらのきよもり)に愛された白拍子(しらびょうし)でしたが、仏御前(ほとけごぜん)に清盛の心が移ったために屋敷を去り、のちに尼となります。

その後、仏御前も世の無常を思い知り、祇王たちの庵(いおり)を訪ねて尼姿を見せます。仏御前は、自分もいつか同じように捨てられる身であることを感じ、「年の若きを頼むべきにあらず」と語ります。

その言葉に続いて、「老少不定のさかひなり。出づる息の入るをも待つべからず」と出てきます。「老少不定」は、老人が先に亡くなり、若者が後に残るとは限らないという仏教の考えを表す言葉です。

つまり、このことわざは、ただ「命は短い」と言うだけの表現ではありません。若さや今の楽しみに安心しきってはならないという、仏御前の切実な思いの中で語られています。

「かげろふ稲妻よりなほはかなし」という続きも、このことわざの意味をよく支えています。かげろうはすぐに消え、稲妻は一瞬で過ぎますが、人の命はそれよりもなお頼りないものとして描かれています。

後の時代にも、この呼吸を手がかりにした無常の言い方は受け継がれました。蓮如(れんにょ)の『御文』二帖目五通「珠数」には、「まことにもって人間は、出ずる息は入るを待たぬならいなり」という近い形の言葉が出てきます。

この後代の形では、「ならいなり」という言い方によって、人間の命のありようそのものが、吐いた息を必ず吸えるとは限らないものだと示されています。古典文学の場面で語られた無常の感覚が、仏教の教えの中でも、人の生き方を静かに見つめ直す言葉として受け継がれていったことがうかがえます。

現在の「出ずる息の入るをも待つべからず」は、命のはかなさを強く感じる場面で用いられます。そこには、人はいつまでも同じように生きられるとは限らないからこそ、今日の時間、人との関わり、なすべきことを大切にしなければならない、という教えがこめられています。

「出ずる息の入るをも待つべからず」の使い方

健太
昨日まで元気にあいさつしてくれた近所のおじいさんが、急に亡くなったと聞いて、胸が苦しくなったよ。
ともこ
出ずる息の入るをも待つべからずという言葉の通りだね。命は、いつまでも続くと決まっているものではないんだね。
健太
そう思うと、毎朝のあいさつも、家族との会話も、当たり前じゃないんだね。
ともこ
うん。今日会える人に、やさしい言葉をかけることを大事にしたいね!
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「出ずる息の入るをも待つべからず」の例文

例文
  • 突然の訃報に接し、出ずる息の入るをも待つべからずという言葉の重みを知った。
  • 祖母は、出ずる息の入るをも待つべからずだからこそ、家族に感謝を伝える日を先延ばしにしてはならないと言った。
  • 大きな事故の知らせを聞き、出ずる息の入るをも待つべからずという命のはかなさを思った。
  • 出ずる息の入るをも待つべからずという通り、若いからといって明日が必ず来るとは限らない。
  • 病室で父の手を握りながら、出ずる息の入るをも待つべからずということわざが胸に浮かんだ。
  • 出ずる息の入るをも待つべからずと考えれば、今日できる謝罪や感謝を明日に延ばすべきではない。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『平家物語』13世紀前半ごろ。
・蓮如『御文』。
・『旧約聖書』「ヨブ記」。





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