【故事成語】
家貧しくして孝子顕る
【読み方】
いえまずしくしてこうしあらわる
【意味】
家が貧しく苦しいときにこそ、親を大切にする孝行な子のよさがはっきり分かるということ。苦しい時に人の本当の徳が現れるたとえ。


【英語】
・A poor home reveals a filial child(貧しい家では孝行な子がはっきりする)
・Hardship reveals true filial devotion(苦しい暮らしの中で本当の孝行が分かる)
・Adversity shows who is truly devoted(苦しい時にこそ本当の尽くし方が分かる)
【類義語】
・国乱れて忠臣現る(くにみだれてちゅうしんあらわる)
・患難に友を知る(かんなんにともをしる)
・歳寒くして松柏の後彫むを知る(さいさむくしてしょうはくののちしぼむをしる)
【対義語】
・貧すれば鈍する(ひんすればどんする)
・衣食足りて礼節を知る(いしょくたりてれいせつをしる)
「家貧しくして孝子顕る」の故事
この故事成語は、中国の後漢後期に生きた王符(おうふ)の言葉として伝わっています。王符は世の中の乱れや政治の問題を強く考えた人で、その考えは『潜夫論(せんぷろん)』にまとめられました。
この言葉は、のちに『後漢書(ごかんじょ)』王符伝にも書かれています。そこで伝わる形は、家のことだけを言うのではなく、国と家を並べて語る文になっています。
その文には、国が乱れると忠臣が現れ、家が貧しくなると孝子が顕れる、という意味が書かれています。つまり、世の中が静かで家の暮らしも楽なときには、人の忠義や孝行は見えにくいということです。
ふだんの暮らしに十分な余裕があると、親を大事にする気持ちが本当に深いのか、ただ自然にそうしているだけなのか、外からは分かりにくいことがあります。ところが家が貧しくなると、親に仕えることには我慢や努力が必要になり、その子の心がはっきり表に出ます。
ここで大切なのは、貧しさそのものをよいものとしてほめているわけではない、という点です。苦しい暮らしはつらいものですが、そういう時にこそ人の本当の思いやりや責任感が隠れずに出る、と言っているのです。
また、この故事成語の「顕る」は、もともと立派な子が新しく生まれるという意味ではありません。もともと持っていた孝心が、苦しい事情の中ではっきり目立つようになる、という意味です。
王符が生きた時代は、政治の乱れや社会の不安が語られる時代でした。そうした中で、国では忠臣、家では孝子というように、苦しい時代ほど本当に頼れる人が分かるという見方が強く打ち出されました。
この考え方は、後の時代にも広く受け取られました。そのため、家貧しくして孝子顕るは、親子の話にとどまらず、苦境でこそ人の本質が分かるという教えとして読まれるようになります。
ただし、いちばん大事な意味は、やはり家の貧しさの中で親を大事にする子の心です。友だちづきあいや仕事の場に広げて考えることはできますが、もとの言葉が指しているのは、まず家庭の中の孝行です。
この故事成語が今も心に残るのは、苦しいときほど人の心の値打ちが分かる、という実感があるからでしょう。楽なときの親切よりも、苦しいときに変わらず尽くす姿のほうが、ずっと重く感じられるのです。
だから家貧しくして孝子顕るは、古い中国の文章に出てくる言葉でありながら、今でも十分に通じます。家が苦しいときに親を思って動く子の姿を見たとき、この故事成語の意味がまっすぐ胸に入ってくるのです。
「家貧しくして孝子顕る」の使い方




「家貧しくして孝子顕る」の例文
- 父の病気で家計が苦しくなったあと、毎日母を助ける兄の姿に家貧しくして孝子顕るという言葉を思った。
- 学費の負担が重い中でも祖母の世話を欠かさない友人は、まさに家貧しくして孝子顕るである。
- 不景気で店の売り上げが落ちてから親を助けて働く息子を見て、家貧しくして孝子顕ると言われた。
- 祭りの準備で家の手伝いが増えても祖父母の食事を先に整える少女には、家貧しくして孝子顕るがよく当てはまる。
- 仕事を失った父を支えるため、進学後も家事を分担した青年に対して、家貧しくして孝子顕るという評価が集まった。
- 社会が苦しい時期に親の介護を引き受けた人の姿から、家貧しくして孝子顕るの重みを感じた。























