【ことわざ】
一引き二才三学問
【読み方】
いちひきにさいさんがくもん
【意味】
出世や成功には、まず上の人からの引き立てが大切で、次に本人の才能、三番目に学問が必要だということ。


【英語】
・It’s not what you know, but who you know(何を知っているかより、だれを知っているかが大事)
【類義語】
・一引き二運三器量(いちひきにうんさんきりょう)
「一引き二才三学問」の語源・由来
「一引き二才三学問」は、特定の中国故事から生まれた表現ではなく、出世に必要な条件を「一・二・三」の順に並べて示したことわざです。「一引き」の「引き」は、単に物を引くことではなく、特別に目をかけて便宜をはかること、また、手づるや縁故を指します。「上役の引きで出世する」という用法もあり、このことわざの第一条件にあたる意味がよく表れています。
「二才」の「才」は、生まれつきの知能の働きや才能を表す言葉です。一方で、「才」には、古くから学問・学・才識を指す意味もありました。つまり、このことわざでは「才」と「学問」が分けて並べられていますが、どちらも人の能力や知識に関わる語でありながら、「才」は持ち前の能力、「学問」は学びによって身につけた知識として理解すると分かりやすくなります。
「三学問」の「学問」は、学校へ通ったり、先生についたり、本を読んだりして新しい知識を学ぶこと、また、身につけた知識を指します。中世から近世にかけては「学文」と書くのが一般的で、「学門」と書くこともありました。学問が大切であることを認めつつも、このことわざでは三番目に置かれているため、知識だけでは世の中を渡れないという現実的な見方が含まれています。
この表現に近い形として、「一引き、二運、三器量」があります。江戸城の大奥では、女中たちが上級の女中を世話親とし、その「引き」によって昇進の度合いが変わることがありました。そこでは、奉公する女中の出世を語る言い方として「一引き、二運、三器量」という形が用いられ、人の引き立てが昇進に強く関わるという考えが示されています。
「一引き二才三学問」は、このような「一に何、二に何、三に何」と順序づける言い方の中で、出世に必要なものを「引き・才・学問」と整理したものです。ここでいう「引き」は、不公平なえこひいきだけを指すとは限りません。上の人に認められ、機会を与えられ、力を発揮する場へと押し上げてもらうことも含みます。
ただし、このことわざには、少し皮肉な響きもあります。才能があり、よく学んでいても、世の中ではそれだけで出世できるとは限らないという見方を含むためです。努力や学問を軽く見る言葉ではなく、実力を生かすには、人から信頼され、認められる関係も大切だという、社会生活の現実を短く言い表したことわざといえます。
現在では、会社での昇進だけでなく、学校の係決め、チームの代表選び、地域活動などにも広げて使えます。自分の力を磨くことはもちろん大切ですが、その力を見てくれる人、支えてくれる人、機会を与えてくれる人との関係も大切にするべきだという教訓として受け取ることができます。
「一引き二才三学問」の使い方




「一引き二才三学問」の例文
- 一引き二才三学問というように、実力があっても上司に認められなければ昇進の機会は少ない。
- 委員長に選ばれた兄は、一引き二才三学問を思わせるほど、先生や友人からの信頼が厚かった。
- 一引き二才三学問は、勉強だけでなく、人に信頼される態度も大切だと教えている。
- 会社では一引き二才三学問の面があり、仕事の成果を見てくれる人との関係も軽視できない。
- 彼は一引き二才三学問を心得て、才能を磨くだけでなく、先輩への報告や相談も大切にした。
- 地域の役員選びでは、一引き二才三学問の通り、知識よりも日ごろの協力ぶりが評価された。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。























