【ことわざ】
田舎に京あり
【読み方】
いなかにきょうあり
【意味】
田舎にも、にぎやかな所や、みやびな趣のある所はある。また、悪い土地にも良い所があるということ。


【英語】
・Every cloud has a silver lining(どんな悪い状況にも良い面がある)
【類義語】
・鄙に都あり(ひなにみやこあり)
・住めば都(すめばみやこ)
【対義語】
・京に田舎あり(きょうにいなかあり)
「田舎に京あり」の語源・由来
「田舎に京あり」の「田舎」は、都会から離れた土地や地方を指す言葉です。「京」は、もとは皇居のある土地、都を指し、とくに平安時代の都である京都をいう場合にも使われました。つまり、このことわざは、離れた地方の中にも、都のようににぎやかで、みやびな所がある、という対照から成り立っています。
古い形として重要なのは、江戸時代前期の俳諧書『毛吹草(けふきぐさ)』(正保2年刊、松江重頼編)です。この書には寛永15年の序があり、巻二には俳諧に用いる季語や恋の言葉、世話と呼ばれる言い回しが収められ、早くから俚諺(りげん:世間で使われることわざや俗な言い回し)の資料として知られていました。
『毛吹草』巻二には、「京にゐなかあり、ゐ中にきゃうあり」という形が出てきます。「ゐ中」は現在の「田舎」に当たる古い表記で、「きゃう」は「京」を仮名で書いた形です。現代の形に直せば、「京に田舎あり、田舎に京あり」となり、都にも田舎めいた所があり、田舎にも都めいた所がある、という二つの見方を並べた言い方です。
この対になる言い方のうち、「京に田舎あり」は、にぎやかな都にも田舎のように不便な所がある、さらに良い土地にも悪い所がある、という意味で使われます。古い用例としては、謡曲『粉川寺』(1553年ごろ)に「京に田舎あり。田舎にも亦みやこ人の心ざまは有るべしや」という形が出てきます。
それに対して「田舎に京あり」は、田舎にもにぎやかな所や、みやびな趣があるという、反対向きの見方を表します。『毛吹草』では両方が一続きに並んでいるため、都と田舎を単純に上下で分けず、どちらにも長所と短所がある、という見方が早くから言い回しとして整っていたことが分かります。
後の時代には、「京に田舎あり」が上方のいろはかるたの「京」に採られ、「田舎に京あり」と続けていうこともある言い方として広まりました。絵札には、大原女(おはらめ)が黒木を頭にのせて運ぶ姿が描かれることが多く、都の中に古い風習や田舎めいた暮らしが残る様子を示すものとして親しまれました。
このように、「田舎に京あり」は、都と田舎を見比べるだけの言葉ではありません。人が見落としがちな場所にも、にぎわい、上品さ、美しさ、暮らしやすさなどの良い面がある、という考えを表すことわざとして定着しました。現在では、地方の町の文化、自然の豊かさ、地域に根づいた行事や人々の工夫などを評価するときにも使われます。
「田舎に京あり」の使い方




「田舎に京あり」の例文
- 山間の小さな町にも立派な美術館があり、田舎に京ありと思わせた。
- 昔ながらの村に美しい祭りが受け継がれていて、まさに田舎に京ありだ。
- 観光地としては有名でなくても、田舎に京ありで、古い町並みには上品な趣がある。
- 小さな港町の朝市は活気に満ち、田舎に京ありという言葉がよく合う。
- 転校先の町には楽しい図書館や音楽会があり、田舎に京ありだと感じた。
- 都会から離れた地域でも、新しい工夫で人が集まる店があり、田舎に京ありの例といえる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』正保2年刊。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。























