【故事成語】
言うは易く行うは難し
【読み方】
いうはやすくおこなうはかたし
【意味】
口で言うのはたやすいが、それを実際に行うことは難しいということ。


【英語】
・Easier said than done(言うのは簡単だが、実行するのは難しい)
【類義語】
・口では大阪の城も建つ(くちではおおさかのしろもたつ)
「言うは易く行うは難し」の故事
「言うは易く行うは難し」は、中国の前漢(ぜんかん)の時代にまとめられた『塩鉄論(えんてつろん)』の「利議(りぎ)」に由来する表現です。『塩鉄論』は、口先の巧みさよりも実際の行いを重く見る考えを述べる中で、この言葉のもととなる一節を記しています。
『塩鉄論』は、前漢の桓寛(かんかん)が選び、まとめた、政治や経済についての議論の書物です。昭帝(しょうてい)の時代の紀元前81年、国が塩・酒・鉄などを独占して売る制度を続けるべきかどうかについて、朝廷で大きな討論が行われ、その内容が宣帝(せんてい)の時代にまとめられました。
その「利議」には、「言者不必有徳。何者、言之易而行之難。」と記されています。分かりやすく言えば、「立派なことを言う者が、必ずしも徳のある人とは限らない。なぜなら、言うことは簡単でも、それを実際に行うことは難しいからである」という意味です。
この一節が述べているのは、単に「努力は難しい」ということだけではありません。人を見きわめるときには、耳に心地よい言葉や巧みな話し方だけで判断せず、その人が本当に行動しているかを見る必要がある、という戒めです。
原文の「言之易而行之難」は、「これを言うは易くして、これを行うは難し」と読まれます。現在の「言うは易く行うは難し」という形は、「これを」という語を省き、言葉と実行との対照をより簡潔に言い表す形になっています。
日本語の用例としては、太宰治『お伽草紙』(昭和20年、太宰治著)に、「言うは易くして、行うは難いものだよ」と出てきます。作中では、自分が「無欲」を実行していると語る場面で用いられ、口にした理想を本当に守り通すことの難しさを表しています。
もとの一節は、人の徳や人物を判断する文脈で使われていましたが、現在では、目標を語るとき、他人に忠告するとき、自分の決意を確かめるときなどにも広く用いられます。「毎日続ける」「約束を守る」「困っている人を助ける」と言葉で表すことはできても、それを実際に続けるには努力が要る、という日常の場面にもよく当てはまります。
この故事成語は、立派な言葉を口にすることを否定するものではありません。言葉にした考えを本当に価値あるものにするには、行動が伴わなければならないという、時代をこえて大切な教えを伝えています。
「言うは易く行うは難し」の使い方




「言うは易く行うは難し」の例文
- 毎朝早起きをすると宣言したものの、言うは易く行うは難しで、弟は三日目に寝坊した。
- 困っている友人をいつでも助けると言っていた彼は、言うは易く行うは難しを胸に、雨の中でも迎えに向かった。
- 地域の清掃活動を毎月続けるには、言うは易く行うは難しという覚悟が必要である。
- 会社の改革案を示した部長は、言うは易く行うは難しと承知した上で、まず自分から働き方を改めた。
- 食品を無駄にしない生活は、言うは易く行うは難しだが、買い物の仕方を見直すことから始められる。
- 言うは易く行うは難しという教えどおり、約束の重さは言葉よりもその後の行動に表れる。
主な参考文献
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・桓寛著、佐藤武敏訳注『塩鉄論―漢代の経済論争』平凡社、1970年。























