【ことわざ】
居ずば出会え
【読み方】
いずばであえ
【意味】
相手がいないと分かった時だけ強がる、卑怯な空威張りをあざける言葉。


【英語】
・A bully is always a coward(人を威圧する者は、実は臆病である)
【類義語】
・犬の遠吠え(いぬのとおぼえ)
・鼬の無き間の貂誇り(いたちのなきまのてんほこり)
・内弁慶(うちべんけい)
【対義語】
・正々堂々(せいせいどうどう)
・直言(ちょくげん)
・面と向かう(めんとむかう)
「居ずば出会え」の語源・由来
このことわざは、中国の古い故事に由来する故事成語ではなく、日本語の言い回しから生まれたことわざです。「居ずば」は「いないならば」という意味に近く、「出会え」は、ただ偶然に会うことではなく、相手の前へ出て立ち向かえ、という強い呼びかけとして働いています。
「居る」は、人や動物がある場所に存在することを表す言葉です。このことわざでは、相手がそこに「いない」ことが重要になります。相手がいないと分かっているからこそ、強気な言葉を口にできるという皮肉が中心にあります。
一方、「出会う」には、人に偶然会う意味のほかに、「出て立ち向かう」という意味もあります。「曲者だ、皆の者出会え」というように、相手に向かって外へ出てこい、立ち向かえ、と呼びかける古風な使い方が、このことわざの語感を支えています。
そのため、「居ずば出会え」は、言葉どおりには「いないなら出てこい」と叫ぶような形になります。しかし、相手がいないからこそ叫んでいるのであり、実際には勝負する気がない人の強がりをあらわにする言い方です。
このことわざのもとにある場面は、相手の不在を確かめたうえで、「今すぐ外へ出て相手になれ」と声を張り上げる姿です。相手がその場にいれば言えないことを、いない時だけ大声で言うところに、卑怯さと滑稽さが表れています。
「卑怯」は、勇気がなく、物事に正面から取り組もうとしないことを表します。また、「空威張り」は、実力がないのに偉そうにしたり、強そうなふりをしたりすることを表します。この二つの意味が重なり、「居ずば出会え」の芯が形づくられています。
似た発想のことわざに「犬の遠吠え」があります。弱い犬が遠くからほえるように、臆病な者が陰で空威張りしたり、本人のいないところで悪口を言ったりすることを表します。「居ずば出会え」も、正面から向き合わず、離れた安全な場所でだけ強がる点でよく似ています。
また、「鼬の無き間の貂誇り」も、近い考え方を持ちます。自分より強い者やすぐれた者がいない時だけ威張るという意味で、相手の不在を利用して大きく出るところが、「居ずば出会え」と重なります。
ただし、「居ずば出会え」は、単に「弱い者が威張る」というだけではありません。「いないなら出てこい」と言う形をとるため、相手がいないことを分かっていながら、いかにも勇ましくふるまう矛盾をあざけるところに特徴があります。
このことわざは、相手を直接傷つけるために使うよりも、その場にいない人への悪口や、本人の前では言えない強がりをたしなめる時に向いています。人のいないところでだけ大きなことを言うのではなく、必要なことは正面から、落ち着いて言うべきだという教えにもつながります。
現在でも、学校や職場、友人関係などで使えます。たとえば、本人がいないところでは強い言葉で批判するのに、本人が来ると急に黙ってしまうような場面では、「居ずば出会え」という言葉が、その弱さと不誠実さを的確に表します。
「居ずば出会え」の使い方




「居ずば出会え」の例文
- 本人が退席した後でだけ強い口調で批判するのは、居ずば出会えのふるまいだ。
- 試合中は黙っていたのに、相手チームが帰ってから急に威張り出すのは、まさに居ずば出会えだ。
- 先生の前では何も言わず、職員室を出た後で文句を並べる態度は、居ずば出会えに近い。
- 兄がいない時だけ強がって悪口を言う弟を見て、家族は居ずば出会えだと感じた。
- 会議で発言しなかった人が、後から廊下でだけ大きなことを言うのは、居ずば出会えと言われても仕方がない。
- 相手のいないところでだけ挑発するような居ずば出会えの態度は、信頼を失いやすい。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・Oxford University Press『Oxford English Dictionary』online edition.























