【ことわざ】
出雲の神より恵比寿の紙
【読み方】
いずものかみよりえびすのかみ
【意味】
男女の仲でも、愛情より金銭が優先されることのたとえ。


【英語】
・Money talks(金がものを言う)
【類義語】
・色気より食い気(いろけよりくいけ)
・金が物を言う(かねがものをいう)
・仏の光より金の光(ほとけのひかりよりかねのひかり)
「出雲の神より恵比寿の紙」の語源・由来
このことわざは、中国の古い逸話に由来する故事成語ではなく、日本語の語呂合わせから生まれたことわざです。「出雲の神」の「神」と、「恵比寿の紙」の「紙」が同じ「かみ」と読むことを利用し、縁結びの神より紙幣のほうがよい、という皮肉をこめています。
「出雲の神」は、出雲の縁結び信仰を背景にした表現です。出雲大社(いづもおおやしろ)にまつられる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)は、男女だけでなく、人々を取り巻くさまざまな縁を結ぶ神として信仰されています。
このことわざでは、その広い意味での「縁」のうち、とくに男女の縁、恋愛や結婚の縁が意識されています。つまり「出雲の神」は、好き合う二人を結びつける力を象徴する言い方として使われています。
一方の「恵比寿の紙」は、恵比寿そのものの神を指すのではなく、恵比寿の姿が描かれた紙、すなわち紙幣を指しています。ここで「神」ではなく「紙」とするところに、このことわざのしゃれと風刺があります。
明治時代の国立銀行券五円の裏面には、七福神の一人で商売の神様でもある恵比寿の像が描かれていました。そのため、「恵比寿の紙」は、ただの紙ではなく、金銭を表す具体的な呼び名として働くようになりました。
恵比寿は商売繁盛や豊かな暮らしと結びつけられやすい神です。縁を結ぶ「出雲の神」と、金銭を思わせる「恵比寿の紙」を並べることで、恋愛と金銭を対比する形ができています。
このことわざの面白さは、「神」と「紙」の音が同じであるだけではありません。神に願う縁よりも、手に取れる紙幣のほうを選ぶという構図によって、人の心が理想や情よりも現実の利益に傾くことを、短く辛口に表しています。
また、明治時代の紙幣が背景にあるため、このことわざは古代から続く信仰そのものから直接生まれた言葉ではありません。出雲の縁結び信仰と、近代の紙幣に描かれた恵比寿の図柄とが重なって成り立つ、比較的新しい感覚をもつことわざです。
「恋愛より金銭のほうがたいせつである」という意味は、単にお金をほめるだけの言い方ではありません。好きな気持ちよりも財産や生活の安定が選ばれる場面を、少し冷ややかに、また世の中の現実として言い表すところに、このことわざの味わいがあります。
現在もこのことわざは、恋愛や結婚の話で、愛情より収入・家柄・財産が重く見られる場合に使われます。出雲の「神」と恵比寿の「紙」という対照によって、人間関係の中に入りこむ金銭の力を、覚えやすい形で伝えることわざになっています。
「出雲の神より恵比寿の紙」の使い方




「出雲の神より恵比寿の紙」の例文
- 昔の物語では、恋人への思いより裕福な家との縁談を選ぶ場面に、出雲の神より恵比寿の紙ということわざがよく当てはまる。
- 彼女が長年の恋人ではなく資産家との結婚を選んだので、周囲は出雲の神より恵比寿の紙だとうわさした。
- 恋愛感情より生活の安定を重んじる考え方を、出雲の神より恵比寿の紙と表すことがある。
- 出雲の神より恵比寿の紙ということわざは、愛情だけでは暮らせないという現実を皮肉に言い表す。
- その芝居では、主人公が誠実な青年ではなく金持ちの商人を選び、出雲の神より恵比寿の紙という結末になった。
- 出雲の神より恵比寿の紙という言葉には、縁結びへの願いより金銭の力が勝つことへの苦い見方が含まれる。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Merriam-Webster, 『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。
・独立行政法人国立印刷局 お札と切手の博物館『日本のお札に描かれた動物』。























