【ことわざ】
金が敵
【読み方】
かねがかたき
【意味】
金銭のために災いを受けたり、身を滅ぼしたりすること。また、金銭は尋ねる敵のように、なかなか手に入らないということ。


【英語】
・money is the root of all evil.(金銭への欲が悪い出来事の原因になる)
【対義語】
・金は湧き物(かねはわきもの)
・金は天下の回りもの(かねはてんかのまわりもの)
「金が敵」の語源・由来
「金が敵」の「金」は、金属としての金だけでなく、貨幣・金銭を指します。「金」には「貨幣。金銭。おかね」という意味があり、このことわざでも、暮らしや人間関係に関わる金銭を表しています。
「敵」は「かたき」と読み、争いの相手、恨みのある相手、戦での相手などを指す言葉です。そのため、「金が敵」という形は、金銭を、まるで人を苦しめる相手のように見立てた表現です。
このことわざには、大きく二つの意味があります。一つは、金銭のために人が苦しみ、災いを受けたり、他人と争ったりするという意味です。
もう一つは、金銭は「尋ねる敵」のように、探してもなかなかめぐりあえないという意味です。ここでは、金銭を手に入れにくいものとしてとらえ、得ようとしても思うように得られない難しさを表しています。
古い用例として、江戸時代前期の俳諧集『西鶴大矢数』(1681年、井原西鶴著)に「縁組も銀か敵のうき世也」とあります。縁組、つまり結婚のような大切な人間関係にも、金銭がからむと苦しみやもめごとの原因になる、という世の中のありさまを詠んだ句です。
この句では「金」ではなく、「銀」という字が用いられています。江戸時代の貨幣感覚では、金や銀は貨幣を表す大切な言葉であり、「金銀」には貨幣一般、かね、金銭という意味もあります。
『西鶴大矢数』は、井原西鶴が大坂の生玉社で一日に四千句の独吟を成し遂げ、翌年に出版した俳諧集です。通し矢の数を競う大矢数にならって、俳諧の句数を競った興行から生まれた作品です。
この古い用例では、金銭が人と人との結びつきを乱すものとして扱われています。つまり、「金が敵」は、単にお金が少ないという嘆きだけでなく、お金のために人が悩み、反目し、心を乱されるという世間の苦さを含んだ言葉です。
一方で、「尋ねる敵のように金銭にはなかなかめぐりあえない」という意味も、生活の実感から生まれたものです。敵を探し求めても簡単には出会えないように、金銭も必要な時ほど思うように手に入らない、というたとえです。
後には、「人は金銭のために悩まされ苦しめられ、金はまるでかたきのようなものだ」という意味が、ことわざとして広く理解されるようになりました。世の中の悪いできごとの多くは金が原因で起こる、という厳しい見方もこの言葉に含まれています。
ただし、「金が敵」は、金銭そのものをただ悪いものと決めつける言葉ではありません。金銭への執着や、金銭をめぐる不公平、貸し借り、欲の深さが、人間関係や人生を傷つけることへの戒めとして読むことができます。
したがって、「金が敵」は、金銭との付き合い方を考えさせることわざです。お金は生活に必要なものですが、それに振り回されると、人を苦しめる敵のような存在にもなりうることを、短い言葉で表しています。
「金が敵」の使い方




「金が敵」の例文
- 遺産の分け方をめぐって親戚が争い、まさに金が敵となった。
- 友人同士でも、貸した金を返す返さないで金が敵になることがある。
- 利益の取り分を決めておかなかったため、共同事業では金が敵となった。
- 金が敵というように、欲に負けて無理な投資をすれば身を滅ぼす。
- 家族のために働いていたはずが、借金に追われて金が敵となった。
- 金が敵にならないよう、会費の使い道は全員に分かる形で記録した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・井原西鶴『西鶴大矢数』1681年。
・HarperCollins Publishers『Collins Easy Learning Idioms Dictionary.』























