【慣用句】
金に飽かす
【読み方】
かねにあかす
【意味】
ある事をするために、金銭を惜しまないで十分に使うこと。


【英語】
・spare no expense.(費用を惜しまない)
・money is no object.(金額は問題ではない)
【類義語】
・金に糸目をつけない(かねにいとめをつけない)
【対義語】
・財布の紐を締める(さいふのひもをしめる)
・爪に火を点す(つめにひをともす)
「金に飽かす」の語源・由来
「金に飽かす」は、「金」と「飽かす」が結びついた言い方です。ここでいう「金」は、金属としての金ではなく、貨幣・金銭を指します。
「飽かす」は、もとは「飽く」に関わる言葉で、十分に満ちているものを存分に使うという意味をもっています。現在も、「金と暇に飽かして収集する」のように、ありあまるものをふんだんに使う意味で用いられます。
そのため、「金に飽かす」は、金銭を出し惜しみせず、費用をたっぷりかけて物事を行うという意味になります。「飽かす」には「飽きさせる」という意味もありますが、この慣用句では「十分に使う」という意味で働いています。
古い用例として、『傾城色三味線(けいせいいろじゃみせん)』(1701年・江戸時代前期、江島其磧作)に近い形が出てきます。この作品は、遊里や遊女を主題とする短い話を集めた、江戸時代の読み物です。
その中に、「銀(カネ)にあかして、工手間のかかりし物ずきの大座敷」という表現があります。これは、金を惜しまず、職人の手間もかけて、趣向をこらした大きな座敷を作ったという内容です。
この用例では、表記は「銀」となっていますが、読みは「カネ」です。江戸時代の文章では、金属名を表す字を用いながら、貨幣や金銭全体を指して「かね」と読むことがあり、この慣用句でも大切なのは、金属そのものではなく、費用を惜しまないという点です。
その後、『くだ巻』(1777年・江戸時代中期)にも、「黒かね丁三丁めへ町屋敷を買(かい)、普請は金にあかし風流尽し」という用例が出てきます。ここでは、町屋敷を買い、建物を造るうえで金を十分に使い、風流を尽くす様子が表されています。
これらの古い用例に共通するのは、建物や座敷など、目に見えるものを立派に整えるために金銭を惜しまないという点です。つまり、「金に飽かす」は、はじめから抽象的な努力をいうよりも、費用をたっぷりかけて物を作る、整える、集めるといった具体的な場面で使われてきました。
現在の用法でも、「金に飽かしてしつらえた豪華な調度品」のように、豪華な品物や建物、収集品などを語る場面でよく使われます。そこには、費用を惜しまない豊かさがある一方で、金の力に頼りすぎるという含みをもつ場合もあります。
このように、「金に飽かす」は、十分にある金銭を思うままに使うという「飽かす」の意味から生まれ、江戸時代の用例を通して、費用を惜しまず物事を行う慣用句として定着してきた表現です。
「金に飽かす」の使い方




「金に飽かす」の例文
- その家は、金に飽かすようにしつらえた豪華な調度品でいっぱいだった。
- 社長は金に飽かす形で一流の職人を集め、古い旅館を改装した。
- 金に飽かすだけでは、長く愛される庭はつくれない。
- 彼は金に飽かす集め方で、珍しい切手を次々と手に入れた。
- 金に飽かすような宣伝をしても、商品そのものがよくなければ客は離れる。
- 文化祭の展示は、金に飽かすのではなく、身近な材料を工夫して作った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・江島其磧『傾城色三味線』1701年。
・『くだ巻』1777年。
・Merriam-Webster, “spare no expense,” Merriam-Webster.com Dictionary.























