【ことわざ】
金の棒にも縋ってみよ
【読み方】
かねのぼうにもすがってみよ
【意味】
成功しそうにないことでも、一度は試してみるとよいということ。


【英語】
・It never hurts to ask.(頼んでみても損はない)
【類義語】
・黄金刀も乞うてみよ(こがねがたなもこうてみよ)
「金の棒にも縋ってみよ」の語源・由来
「金の棒にも縋ってみよ」の「金」は、ここでは金銭ではなく、金属を意味する「かね」です。「棒」は、木・竹・金属などでできた細長い物を指し、「縋る」は、頼りとなる物につかまることから、助けを求めて人や物を頼ることまで表します。
したがって、言葉どおりには、金属でできた棒にさえつかまってみよ、という形です。金属の棒は硬く冷たく、人のように思いやりをもって助けてくれる物ではありません。そのような頼りにくい物にも、まずは縋ってみる姿をたとえにしています。
この「金の棒」は、頼みを聞いてくれそうもない、冷淡に思える相手のたとえにもなっています。初めから無理だと決めつけず、一度は助けを求めてみれば、思いがけず願いを聞き入れてもらえるかもしれない、という教えです。
古い記録の一つに、高知県女子師範学校郷土室編『土佐俚諺集』(1935年・昭和10年)があります。この本には、「金の棒にもすがってみよ」という、現在と同じ形のことわざが収められています。
『土佐俚諺集』は、土佐地方に伝わることわざを集めた書物です。この用例では、「すがって」が平仮名で書かれていますが、現在の「縋って」と読みも意味も同じです。
命令を表す「みよ」は、単に物につかまれという意味ではありません。結果がどうなるか分からなくても、まず行動して確かめてみるよう勧める働きをもっています。そのため、このことわざは、困った人の心情を述べるだけでなく、ためらっている人の背中を押す言い方にもなっています。
意味の近いことわざに、「黄金刀も乞うてみよ」があります。「乞う」は、物を与えてくれるよう求めたり、何かをしてくれるよう願ったりすることです。手に入りそうもない黄金の刀であっても、求めてみるだけは求めてみよ、という形で、最初から諦めないことを教えています。
「金の棒にも縋ってみよ」と「黄金刀も乞うてみよ」は、どちらも、かなう見込みが薄くても一度は試すという発想をもっています。一方は「縋る」という動作を用い、もう一方は「乞う」という願い出る行為を用いて、同じ教えを異なる姿で表しています。
「藁にも縋る」とも似ていますが、意味の重なり方には違いがあります。「藁にも縋る」は、追い詰められた人が、頼りにならない物まで頼る様子を表します。それに対して、「金の棒にも縋ってみよ」は、望みが薄くても、まず頼んだり試したりすることを勧める点に重きがあります。
このように、「金の棒にも縋ってみよ」は、冷たく頼りにくい金属の棒へ手を伸ばす姿から、難しそうなことでも初めから諦めず、一度は働きかけてみることの大切さを説いたことわざです。試さなければ可能性は生まれないという、前向きな教えを含んでいます。
「金の棒にも縋ってみよ」の使い方




「金の棒にも縋ってみよ」の例文
- 厳しい先生だったが、金の棒にも縋ってみよと、作品の提出を一日待ってもらえないか頼んだ。
- 貸してもらえる見込みは薄かったが、金の棒にも縋ってみよと、近所の店に道具を借りに行った。
- 仲直りは難しそうでも、金の棒にも縋ってみよと、彼は友人へ手紙を書いた。
- 小さな会社にも協力してもらえるかもしれないと、担当者は金の棒にも縋ってみよの気持ちで訪問した。
- 募集はすでに締め切られていたが、金の棒にも縋ってみよと、主催者に参加できないか尋ねた。
- 必要な部品は製造を終えていたものの、金の棒にも縋ってみよと、工場へ在庫の有無を問い合わせた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・高知県女子師範学校郷土室編『土佐俚諺集』高知県女子師範学校郷土室、1935年。























