【故事成語】
風、破窓を射て灯火滅し易し
【読み方】
かぜ、はそうをいてともしびめっしやすし
【意味】
破れた窓から風が吹き込み、灯火が消えやすいような、貧しくわびしい住まいのこと。


【類義語】
・風破窓を射る(かぜはそうをいる)
・手鍋を提げる(てなべをさげる)
・赤貧洗うが如し(せきひんあらうがごとし)
「風、破窓を射て灯火滅し易し」の故事
「風、破窓を射て灯火滅し易し」は、中国唐末の詩人・杜荀鶴の詩「旅中臥病」にもとづく表現です。杜荀鶴は、字を彦之といい、唐末の動乱による人々の苦しみを写実的にとらえた詩を多く残しました。
この詩は、『全唐詩(ぜんとうし)』に収められています。『全唐詩』は、中国の清代に編まれた唐詩の大きな全集で、康熙帝の命により1705年に彭定求らが着手し、翌年に完成しました。
「旅中臥病」は、旅の途中で病に臥すという題名のとおり、故郷を遠く離れた旅先で病む人の心細さを詠んだ詩です。詩の冒頭では、秋になって病にまとわりつかれるとは思わなかったこと、枕の上でもなお旅程を思っていることが述べられています。
その中に、「風射破窗燈易滅,月穿疏屋夢難成」とあります。これは、風が破れた窓から吹き込み、灯火は消えやすく、月の光がすき間の多い粗末な家を通り抜けて、眠ろうとしても夢が成り立ちにくいという意味です。
「破窓」は、やぶれ壊れた窓を指します。窓が壊れていれば、外の風を防ぐことができず、部屋の中の灯火はすぐに揺らぎ、消えやすくなります。
「射る」は、本来は矢を放つことを表しますが、光や、対象に向けて放たれたものがその対象をとらえる意味にも使われます。この句では、風が矢のように破れた窓を通って室内に入り込むようすを、強く印象づけています。
この句の後には、故郷は三千里どころではなく遠く、新しく渡ってきた雁の声を一つ二つ聞く、という内容が続きます。遠い故郷を思いながら、旅先の粗末な宿で病む人の孤独が、風、灯火、月、雁の声によって重ねて描かれています。
日本語では、原句の前半をもとに「風破窓を射る」という形も使われました。この形は、破れた窓から風が吹き込むような、貧しいわび住まいのさまを表します。
また、古い日本語の用例として、謡曲『芭蕉』(1470年ごろ・室町時代)に「風破窓を射て燈きえ易く」という形が出てきます。唐詩の一句が、日本では漢詩文の教養を背景に、わびしい住まいを表す言い方として受け入れられていたことが分かります。
「風、破窓を射て灯火滅し易し」は、単に家が古いというだけでなく、貧しさ、寒さ、孤独、心細さまで含んで表す言葉です。破れた窓と消えやすい灯火の取り合わせによって、暮らしの苦しさが目に見える情景として伝わります。
「風、破窓を射て灯火滅し易し」の使い方




「風、破窓を射て灯火滅し易し」の例文
- 旅人が泊まった小屋は、風、破窓を射て灯火滅し易しというほど粗末な住まいだった。
- 山奥の庵は、風、破窓を射て灯火滅し易しの趣で、冬の夜はことに寒かった。
- 物語の中の老夫婦は、風、破窓を射て灯火滅し易しの家で、互いに支え合って暮らしていた。
- 戦乱で焼け残った家は、風、破窓を射て灯火滅し易しのありさまだった。
- その詩は、風、破窓を射て灯火滅し易しの住まいを描き、旅先で病む人の孤独を伝えている。
- 貧しい下宿の描写に、風、破窓を射て灯火滅し易しという表現がよく合う。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン。
・彭定求等奉勅編『全唐詩』1706年。























