【故事成語】
關關たる雎鳩は河の洲に在り
【読み方】
かんかんたるしょきゅうはかわのすにあり
【意味】
夫婦が仲よく、礼儀正しく和合していることのたとえ。『詩経』「関雎」の冒頭の句から、夫婦の道や円満な夫婦関係を表す。


【英語】
・a harmonious marriage.(円満な結婚生活)
【類義語】
・関雎の楽しみ(かんしょのたのしみ)
・琴瑟相和す(きんしつあいわす)
【対義語】
・琴瑟調わず(きんしつととのわず)
「關關たる雎鳩は河の洲に在り」の故事
「關關たる雎鳩は河の洲に在り」は、中国最古の詩集とされる『詩経(しきょう)』の第一篇「関雎」に出てくる冒頭の句です。『詩経』は五経の一つで、三百五篇から成り、およそ紀元前十一〜六世紀ごろの歌を集めたものと考えられています。
原文は「關關雎鳩,在河之洲。窈窕淑女,君子好逑」と続きます。日本語では「関関たる雎鳩は河の洲に在り、窈窕たる淑女は君子の好逑」と読み下され、河の中州にいる雎鳩の鳴き交わす姿から、君子にふさわしい淑女へと思いが移っていきます。
「關關」は、鳥がのどかに、また和らいだ声で鳴くさまを表します。『詩経』「周南・関雎」に出る語として古くから知られ、日本語の「関関」も、鳥のなごやかな鳴き声を示す言葉として用いられてきました。
「雎鳩」は、鳥の「みさご」の異名です。みさごは水辺にすむ鳥で、『詩経』のこの句では、雌雄の仲のよい水鳥として受け取られました。
「関雎」は、この詩の題名であり、冒頭の「関関雎鳩」を略した名でもあります。古くから「夫婦の道」や「夫婦が和合して礼儀正しいこと」を表す言葉として用いられました。
『関雎』の詩は五章から成り、君子と淑女の愛情をうたっています。はじめに雎鳩の声を置くことで、和やかに応じ合う鳥の姿が、理想の男女の結びつきへとつながる構成になっています。
詩の後半には、「窈窕淑女」を求めて思い悩む場面があり、さらに琴や瑟、鐘や鼓によって親しみ楽しませる場面が続きます。これは、ただ情熱を述べるのではなく、相手を敬い、正しい礼の中で結ばれることを願う詩として読まれてきました。
古い解釈では、「関雎」は「后妃の徳」を表す詩とされました。『毛詩序』には、「關雎,后妃之德也」とあり、また「風天下而正夫婦」と述べて、天下の人々に夫婦のあり方を教え正す詩と位置づけています。
このため、「關關たる雎鳩は河の洲に在り」は、単に水鳥の姿を写しただけの句ではなくなりました。後世には、夫婦が仲よく、しかも礼儀にかなって円満に暮らすことを示す古典的な表現として受け継がれました。
日本でも、「関雎」という言葉は早くから受け入れられました。『保元物語』(1220年ごろ成立)には「関雎の徳」という用例があり、夫婦の道や后妃の徳を表す漢籍由来の言葉として理解されていたことが分かります。
さらに「関雎の楽しみ」という言い方も生まれました。これは、夫婦が和合し、礼儀正しく円満な家庭生活を営む楽しみを表す言葉で、江戸時代の浄瑠璃『津国女夫池』(1721年)にも用例があります。
現在の「關關たる雎鳩は河の洲に在り」は、日常会話で頻繁に使う言葉ではありません。しかし、古典に根ざした表現として、夫婦の仲むつまじさや、落ち着いた円満さを格調高く表すときに用いられます。
「關關たる雎鳩は河の洲に在り」の使い方




「關關たる雎鳩は河の洲に在り」の例文
- 祖父母はいつも互いを思いやり、まさに關關たる雎鳩は河の洲に在りという暮らしを続けている。
- 結婚五十年を迎えた二人の姿には、關關たる雎鳩は河の洲に在りという言葉がよく似合う。
- 夫婦で店を支え合う様子は、關關たる雎鳩は河の洲に在りを思わせる穏やかさだった。
- 互いに礼を忘れず助け合う家庭こそ、關關たる雎鳩は河の洲に在りの心に通じる。
- 祝辞の中で、先生は新郎新婦に關關たる雎鳩は河の洲に在りのような円満な家庭を築いてほしいと述べた。
- 年を重ねても仲むつまじい両親を見て、關關たる雎鳩は河の洲に在りという古典の句を思い出した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・『詩経』。
・『毛詩序』。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary.』























