「火中の栗を拾う」の意味(故事・類義語・英語)
【ことわざ】
火中の栗を拾う
【読み方】
かちゅうのくりをひろう
【意味】
自分ではなく他人の利益のために、そそのかされ危険をおかし、酷い目にあうことのたとえ。
火の中から栗を拾うなんて、手が焼けるのは目に見えてるやろうに、それを他人のためにやっちゃうなんて、ちょっと考えなあかんような気もするな。人の頼み事には、ちゃんと考えてから答えることが大事やね。
火中の栗を拾うの語源になったといわれているのが、十七世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌによるフランスの寓話「猿と猫」(Le singe et le chat)。『イソップ物語』をもとにした童話だといわれている。内容としては、一匹の猿と猫が暖炉の前で栗が焼けるのを見ていた。猿は猫をそそのかし、猫に暖炉の中の栗を取らせた。猫はひどい火傷を負った上に、火傷をしながら取った栗は猿に食べられてしまったという猫が踏んだり蹴ったりな話。
【類義語】
・手を出して火傷する
・雉も鳴かずば撃たれまい
・月夜に釜を抜かれる
・鳶に油揚げを攫われる
・熱鉄を飲む
・白刃を踏む
・一髪千鈞を引く
【英語】
・Pull someone else’s chestnuts out of the fire.(火の外へ他人の栗をつまみとる)
・To take a risk for someone.(誰かのために危険を冒す)
「火中の栗を拾う」の解説
「火中の栗を拾う」っていう言葉はね、自分にとっては関係ないことなのに、他人にそそのかされて危険なことに首を突っ込んで、結局は酷い目に遭ってしまうことのたとえなんだよ。
この言葉の中の「栗」は、そのまま栗の実のことで、「火中」は火の中のことだよ。栗の実を火に入れて焼いたりすることがあるんだけど、その中で熱くなった栗を素手で拾うなんて、痛いし、危険なことだよね。
例えば、友達が「あの人に言ってやって!」と頼んできたとき、その友達のために、自分が関係ない喧嘩の仲裁に入って、結果的に自分が傷ついてしまうようなことを指すんだよ。
このことわざは、自分の利益にならないことで、他人に簡単にそそのかされて危険なことをしてしまうお人よしを指して笑う言葉なんだ。だから、他人の言うことに簡単に飛びつかず、自分でよく考えて、自分にとって本当に大切なことに力を注ぐべきだという教えも含んでいるんだよね。
「火中の栗を拾う」の使い方
「火中の栗を拾う」の例文
- これはあの人自身の問題なのだから、あなたがわざわざ火中の栗を拾う必要などない。
- 失敗すると分かっているのに、そのプロジェクトに参加するのは、火中の栗を拾うようなものだ。
「火中の栗を拾う」を深掘り
「火中の栗を拾う」ということわざは、自分の利益にもならないのに危険な行動や冒険をすることを警告する言葉です。
直訳すると、これは文字通り、火の中にある栗の実を手で拾う行為を指します。このような行為は非常に危険であり、栗の実がいつ破裂するかわからないため、火傷のリスクがあります。
このことわざの背景には、サルがネコをおだてて火の中の熱い栗を拾わせ、結果的にネコが火傷を負うという話があります。
この物語はイソップ寓話にあると言われているものの、具体的な『イソップ寓話集』には記載されていません。
しかし、フランスの詩人ラ・フォンテーヌの『寓話』に「サルとネコ」という題で紹介されています。また、フランスにも「暖炉のマロンに手を出す」という同様の意味を持つことわざが存在します。
また、日本には「栗を焼くには芽を欠いて焼け」という古いことわざがあり、これによれば、栗の芽を取り除いて焼くと、栗は破裂しないとされています。
さらに、「サルカニ合戦」という日本の伝説にも、クリが関与しており、サルとの戦いでカニを助けたクリは、火の中で破裂してサルに火傷を負わせる役割を果たしています。
新潟や富山の地域には、炉の荒神様や火の神様がクリを好むという伝承があり、栗の皮を焼くと喜ぶという言い伝えも存在します。
要するに、「火中の栗を拾う」ということわざは、不必要なリスクを冒すことの危険性を示唆する言葉であり、サルとネコの物語を背景に持つものとして知られています。
参考文献
植物ことわざ事典 | 足田 輝一