【ことわざ】
狐七化け狸は八化け
【読み方】
きつねななばけたぬきはやばけ
【意味】
狐は七通りに化けるが、狸は八通りに化けるといい、狸のほうが狐よりも化けるのが上手だということ。


「狐七化け狸は八化け」の語源・由来
「狐七化け狸は八化け」は、狐も狸もさまざまな姿に化けるという、日本の古い言い伝えから生まれたことわざです。狐は七通り、狸はそれより一つ多い八通りに化けるとして、狸のほうが化ける腕前に優れていることを表します。「狐の七化け狸の八化け」という形でも使われます。
ただし、狐が化ける七つの姿と、狸が化ける八つの姿が、それぞれ決まった一覧として伝わっているわけではありません。なぜ七と八を用いるのかについても、広く認められた一つの説はなく、二つの数を並べ、狸を狐より一段上に置く言い回しとして定着したものです。
狸や、それに近い動物が人の姿になるという考え方は、古い記録にも書かれています。『日本書紀(にほんしょき)』(720年・奈良時代、舎人親王ほか編)の推古天皇三十五年、すなわち627年の記事には、「春二月、陸奥有狢。化人以歌」とあります。これは、春二月に陸奥国(むつのくに)に狢(むじな)が現れ、人に化けて歌ったという意味です。
もっとも、古い文献に出てくる「狢」「狸」「猯」などの文字は、現代の動物分類における狸だけを、いつも明確に指していたわけではありません。地方や時代によって、狸・穴熊などの呼び名や漢字の使い分けが一定していなかったためです。それでも、人間以外の獣が人の姿に変わるという発想が、奈良時代にはすでに記録されていたことが分かります。
狐が人に化ける話も、早くから伝えられてきました。『日本霊異記(にほんりょういき)』(822年ごろ・平安時代初期、景戒編)の巻上第二話には、狐が女の姿となって男と夫婦になり、子をもうける話が収められています。この話は、狐が人間そっくりの姿になり、人と暮らすという伝承の古い例です。
その後も、狐や狸などが人を惑わせる話は、『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』(12世紀前半ごろ成立、平安時代後期)や『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』(13世紀前半成立、鎌倉時代前期)などの説話集に受け継がれました。狐や狸は、僧や女、老人などに姿を変えたり、不思議な出来事を起こしたりする存在として描かれています。
江戸時代以降になると、狐や狸が人に化ける話、人を道に迷わせる話、目の前の物を別の物に見せる話などが、各地の昔話や世間話として広まりました。狸については、僧や大入道、茶釜などに化ける話のほか、腹鼓や狸囃子などの伝承も親しまれ、狐と並ぶ「化ける動物」の代表となりました。
こうした長い伝承を背景に、化ける力を競う狐と狸を、七と八という調子のよい数で比べたものが「狐七化け狸は八化け」です。狐も十分に化けるのが上手ですが、狸はさらに一枚上であるという、二匹の化け比べを印象深く言い表しています。
「狐七化け狸は八化け」の使い方




「狐七化け狸は八化け」の例文
- 昔話の中では、狐七化け狸は八化けの言葉通り、狸が狐を化け比べで負かした。
- 祖母は、狐と狸が次々に人へ姿を変える話を聞かせながら、狐七化け狸は八化けと言った。
- 郷土芸能の舞台では、狐七化け狸は八化けを題材に、狐と狸の変身勝負が演じられた。
- 狐七化け狸は八化けということわざには、狸のほうが狐より化けるのが上手だという考えが表れている。
- その絵本は、狐七化け狸は八化けをもとに、狸が八つの姿を披露する物語に仕立てられている。
- 民話の研究発表では、狐七化け狸は八化けに表れた狐と狸の伝承を取り上げた。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・舎人親王ほか編『日本書紀』720年。
・景戒『日本霊異記』822年ごろ。
・『今昔物語集』12世紀前半ごろ成立。
・『宇治拾遺物語』13世紀前半成立。























