【ことわざ】
啄木鳥の子は卵から頷く
【読み方】
きつつきのこはたまごからうなずく
【意味】
生まれつき優れた素質をもつ者は、幼いころからその片鱗を表すというたとえ。


【類義語】
・栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)
・蛇は一寸にして人を呑む(じゃはいっすんにしてひとをのむ)
【対義語】
・大器晩成(たいきばんせい)
「啄木鳥の子は卵から頷く」の語源・由来
啄木鳥(きつつき)は、丈夫な足と堅い尾羽で体を支えながら木の幹に垂直に止まり、強いくちばしで木をつつく鳥です。木の中の虫を捕らえるほか、巣穴を作ったり、音を響かせて仲間に合図したりするためにも、木をつつきます。
このことわざは、啄木鳥の子が幼いうちから首を上下に動かし、早くも木をつつく習性を表しているという見立てから生まれました。親鳥と同じ動きがごく幼いころから現れることを、生まれつきの才能が早くから外に表れることに重ねています。
「卵から」は、卵の中のひなが実際にうなずくという意味ではなく、「生まれる前からそうであるかと思われるほど早くから」ということを強く表した言い方です。「頷く」は首を上下に動かすことであり、その動きが、やがて木をつつく啄木鳥らしい動作を思わせます。
このことわざには、「てらつつきの子は卵から頷く」という形もあります。「てらつつき」は啄木鳥の古い呼び名で、「寺啄の子は卵から頷く」という漢字表記も用いられます。
鳥の名としての「てらつつき」は、『本草和名(ほんぞうわみょう)』(918年頃・平安時代前期、深根輔仁著)に記載されています。また、藤原家隆の歌を九条基家が編んだ『壬二集(みにしゅう)』(1245年・鎌倉時代)にも、「てらつつき」を詠んだ歌が収められています。これらはことわざの全文ではありませんが、その古い形に使われた鳥の呼び名が、平安時代から鎌倉時代にかけて、すでに知られていたことを示しています。
啄木鳥の呼び名は、古くは「てらつつき」でしたが、室町時代には「けらつつき」という形も生まれました。近世になると「きつつき」が現れ、しばらくは三つの呼び名が併せて使われましたが、近世末以降は「きつつき」が標準的な形となりました。
松尾芭蕉の『おくのほそ道』(1694年定稿・江戸時代中期)には、「木啄も庵はやぶらず夏木立」という句があります。この「木啄」は「きつつき」と読み、江戸時代には、現在につながる呼び名が用いられていたことが分かります。
こうした鳥名の移り変わりに伴い、古い「てらつつきの子は卵から頷く」という形と、現在の標準的な鳥名を用いた「啄木鳥の子は卵から頷く」という形が伝えられています。言い回しは変わっても、幼い啄木鳥の動作から、生まれつきの素質は早くから現れると説く意味は共通しています。
このことわざは、単に幼い子どもを褒める言葉ではありません。年齢からは予想しにくいほど優れた技量や着眼点を示し、将来の活躍を思わせる場合に、早くから現れたその素質をたたえて用います。
「啄木鳥の子は卵から頷く」の使い方




「啄木鳥の子は卵から頷く」の例文
- 一年生とは思えない見事な作文に、先生は啄木鳥の子は卵から頷くと感心した。
- 幼いころから複雑な曲を弾きこなした姉を、祖父は啄木鳥の子は卵から頷くと評した。
- 少年の鋭い観察力には、啄木鳥の子は卵から頷くという言葉がよく当てはまる。
- 新人選手が初めての大会で優れた判断力を示し、監督は啄木鳥の子は卵から頷くと思った。
- 入社したばかりの彼女が独創的な企画をまとめたため、部長は啄木鳥の子は卵から頷くと将来を期待した。
- 幼少期の作品を見れば、あの画家が啄木鳥の子は卵から頷くような才能の持ち主だったことが分かる。
主な参考文献
・現代言語研究会『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・深根輔仁『本草和名』918年頃。
・藤原家隆『壬二集』1245年頃。
・松尾芭蕉『おくのほそ道』1694年定稿。























