【ことわざ】
昨日の敵は今日の友
【読み方】
きのうのてきはきょうのとも
【意味】
昨日まで敵だった者でも、事情が変わって今日は味方や友になること。人の心や運命がうつろいやすく、あてにならないことのたとえ。


【類義語】
・昨日の敵は今日の味方(きのうのてきはきょうのみかた)
・昨日の淵は今日の瀬(きのうのふちはきょうのせ)
・昨日の花は今日の夢(きのうのはなはきょうのゆめ)
【対義語】
・昨日の友は今日の仇(きのうのともはきょうのあだ)
・昨日の友は今日の敵(きのうのともはきょうのてき)
「昨日の敵は今日の友」の語源・由来
「昨日の敵は今日の友」は、人や集団の関係が、事情によって短い間に変わることを表すことわざです。昨日まで争っていた相手が、今日には同じ目的をもつ味方になるという、立場の移り変わりを言い表します。
このことわざでは、「昨日」と「今日」が、実際の一日だけを指すとは限りません。ごく短い時間のうちに、関係や運命が変わることを分かりやすく示すための言い方です。
古い形としては、「昨日の敵は今日の味方」という形がよく知られています。この形では、「敵」と「味方」の対比がはっきりしており、対立していた相手が事情の一変によって協力する側へ移ることを表します。
この形の古い用例として、『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』(1747年・江戸時代中期、二世竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作)があります。この作品には、「きのふの怨(アダ)はけふの味方。あら心安や嬉しやな」という言葉が出てきます。
『義経千本桜』は、人形浄瑠璃の時代物で、延享4年(1747)に大坂竹本座で初演されました。源義経の伝説を題材にしながら、平家の武将たちが実は生きていて再起を図るという筋を中心にした作品です。
この作品では、源氏と平家の対立を背景に、敵味方の関係が単純には割り切れないものとして描かれます。「きのふの怨はけふの味方」という用例は、昨日まで恨みを抱いていた相手が、今日には頼れる味方になるという転換を、短い言葉で示しています。
その後、「味方」のかわりに「友」を用いた「昨日の敵は今日の友」という形も広まりました。「味方」は同じ側に立つ相手を表し、「友」は心の近さや親しさまで含みやすい言葉です。
このことわざは、敵と友が入れかわるという一つの出来事だけを述べるものではありません。人の心や運命は変わりやすく、昨日の関係が今日もそのまま続くとは限らない、という広い教訓も含んでいます。
似た考えを表す言葉に「昨日の淵は今日の瀬」があります。これは、『古今和歌集(こきんわかしゅう)』(905〜914年成立、平安時代前期)雑下の「世中はなにかつねなるあすかがはきのふのふちぞけふはせになる」にもとづき、人の世の変わりやすさを表します。
また、「昨日の花は今日の夢」は、世の中の移り変わりが激しいことを表す言い方です。これらの表現と同じように、「昨日の敵は今日の友」も、よい関係への変化だけでなく、世の中や人間関係の定めなさを伝えます。
反対の向きから見ると、「昨日の友は今日の仇」「昨日の友は今日の敵」という言い方があります。こちらは、親しかった相手が急に敵対することを表し、人の離合集散があてにならないことを示します。
現在の「昨日の敵は今日の友」は、試合で争った相手とあとで親しくなる場合や、競争していた会社同士が協力する場合、対立していた人々が共通の目的のために手を組む場合などに用います。ただ仲直りを喜ぶだけでなく、立場や関係は変わるものだという、世の中の移り変わりを含んだことわざです。
「昨日の敵は今日の友」の使い方




「昨日の敵は今日の友」の例文
- 決勝で激しく競い合った二人は、全国大会では同じ代表チームに入り、まさに昨日の敵は今日の友となった。
- 長く競争していた二つの会社が共同開発を始め、昨日の敵は今日の友という関係になった。
- けんかをしていた友人同士が、学級会の準備で協力し、昨日の敵は今日の友を実感した。
- 政治の世界では、昨日の敵は今日の友となり、対立していた相手と手を組むこともある。
- 災害支援の場では、ふだん競い合う団体も協力し、昨日の敵は今日の友として動いた。
- 昨日の敵は今日の友というように、人間関係は事情によって大きく変わる。
主な参考文献
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・竹田出雲二世・三好松洛・並木千柳作『義経千本桜』1747年。
・紀友則ほか撰『古今和歌集』905〜914年。























