【苦あれば楽あり】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

楽あれば苦あり苦あれば楽あり

【ことわざ】
苦あれば楽あり

【読み方】
くあればらくあり

【意味】
苦しいことの後には、楽しいことや安らかな時が訪れるということ。また、苦労はやがて報われるというたとえ。

ことわざ博士
苦あれば楽ありは、苦しい状態がいつまでも続くわけではないという希望を表すんだよ。
助手ねこ
困難に耐えて努力している人を励ましたり、苦労が実を結んだ場面を振り返ったりするときに用いるニャン。

【英語】
・There is no pleasure without pain.(苦労なしに楽しみは得られない)

【類義語】
・苦は楽の種(くはらくのたね)
・沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり(しずむせあればうかぶせあり)

「苦あれば楽あり」の語源・由来

ことわざを深掘り

「苦あれば楽あり」は、「苦」と「楽」という反対の状態を並べ、苦しい時期の後には楽な時期が訪れることを表したことわざです。「あれば……あり」という簡潔な形によって、人生の境遇は一つの状態にとどまらず、苦しみから安らぎへと移り変わることを示しています。

このことわざの沿革には、「楽あれば苦あり」や「楽は苦の種、苦は楽の種」といった、苦と楽を対にして捉える古くからの言い回しが深く関わっています。これらはいずれも、苦しいことと楽なことは別々に存在するのではなく、時の流れの中で交互に訪れたり、一方が他方を生むきっかけになったりするという考え方を表しています。

江戸時代中期の浮世草子『笑談医者気質(しょうだんいしゃかたぎ)』(1774年、永井堂亀友著)には、「楽は苦の種、苦は楽の種」とあります。楽を続ければ後に苦労を招くことがあり、反対に、今の苦労は後の安楽につながるという意味で用いられています。この段階ですでに、「苦の後には楽がある」という現在のことわざに近い考え方が、対句の形で表されていました。

「楽あれば苦あり」は、江戸時代に庶民の間で親しまれた江戸いろはかるたの「ら」の札にも採られました。いろはかるたは、いろは四十八文字を頭文字として、教訓やことわざを読み札にした遊びです。「楽あれば苦あり」は、楽な時にも油断してはならないという戒めを、遊びながら覚えられる形で広めました。

明治13年、すなわち1880年に初演された河竹黙阿弥の歌舞伎『木間星箱根鹿笛(このまのほしはこねのしかぶえ)』には、「楽あれば苦ある浮世の習ひにて」とあります。楽しいことの後に苦しいことが訪れるのは、この世の常であるという意味です。この用例からも、「楽あれば苦あり」が、苦楽の移り変わりを表す言い回しとして定着していたことが分かります。

やがて、「楽あれば苦あり」の後に「苦あれば楽あり」を続ける言い方が、広く用いられるようになりました。昭和22年、すなわち1947年の林芙美子『お父さん』では、父親の言葉として「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」が出てきます。戦争の傷跡が残る暮らしの中で、語り手の少年はこの言葉を思い出し、豊作となって米が多く取れることを願っています。苦しい生活の後に明るい時が訪れてほしいという願いが、このことわざに重ねられています。

この対になった言い方の後半が独立したのが、「苦あれば楽あり」です。「楽あれば苦あり」が、順調な時にも苦労への備えを忘れないよう戒めるのに対し、「苦あれば楽あり」は、つらい状況にある人へ、もう少し辛抱すればよい時が訪れると励ます働きを強くもっています。

よく似た「苦は楽の種」は、今の苦労が将来の安楽を生むもとになるという、原因と結果のつながりを重く見た表現です。一方、「苦あれば楽あり」は、苦しい出来事の後には楽しい出来事があるという、境遇の移り変わりを広く表します。両者は重なる部分をもちますが、「苦あれば楽あり」のほうが、苦しい時期はいつまでも続かないという希望を直接伝える言い方です。

したがって、このことわざは、苦労すれば必ず思いどおりの結果になると約束する言葉ではありません。困難の中でも希望を失わず、努力を続ける人を支えるために、苦しい時の先には安らぎや喜びもあると説くことわざとして受け継がれています。

「苦あれば楽あり」の使い方

健太
二週間も逆上がりを練習しているのに、今日も鉄棒の上まで足が上がらなかったよ……。
ともこ
手の位置を直したら、あと少しで回れそうだったよ。苦あれば楽ありというし、もう一度やってみよう!
健太
放課後に練習したら、初めて一人で回れたよ!できた瞬間、今までの苦労が全部うれしさに変わったんだ。
ともこ
やったね!あきらめずに続けたから、苦あれば楽ありを本当に味わえたね。

「苦あれば楽あり」の例文

例文
  • 長い入院生活を終えて元気に退院した祖父は、苦あれば楽ありだと笑った。
  • 毎日の厳しい練習が優勝につながり、選手たちは苦あれば楽ありを実感した。
  • 仕事で失敗が続いても、彼女は苦あれば楽ありと自分を励ました。
  • 家族で力を合わせて苦しい時期を乗り越え、苦あれば楽ありという言葉をかみしめた。
  • 受験勉強はつらかったが、合格通知を手にしたとき、苦あれば楽ありだと思った。
  • 苦あれば楽ありを信じ、町の人々は災害からの復興に粘り強く取り組んだ。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・永井堂亀友『笑談医者気質』1774年。
・河竹黙阿弥『木間星箱根鹿笛』1880年。
・林芙美子『お父さん』1947年。




講談社刊行・全3冊

運営者・北澤篤史の著書

ことわざ・四字熟語・漢字熟語を、マンガで楽しく学べる図鑑シリーズです。

※Amazon・楽天の購入先にはアフィリエイトリンクが含まれます。

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉の表紙
ことわざ

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉

試験によく出ることわざを、マンガと解説で楽しく学べる一冊。

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉の表紙
四字熟語

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉

四字熟語をマンガで理解し、意味・漢字・使い方を覚えたい人へ。

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑の表紙
漢字熟語

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑

似た意味・同じ読みの漢字熟語の違いを、マンガと用例で学べる一冊。