目次
「苦しい時の神頼み」とは
読み方・意味
- ことわざ:苦しい時の神頼み
- 読み方:くるしいときのかみだのみ
- 意味:普段は神仏を信じない人が、苦しいときだけ神仏にすがること。転じて、普段は疎遠にしている人や義理を欠いている人に対して、自分が困ったときにだけ助けを求めることのたとえ。
「苦しい時の神頼み」とは、ふだんは神や仏をおがんだことのない者が、苦しいときにだけ、神仏に祈って助けを求めることから、自分が困ったときにだけ、他人に頼ろうとすることです。
普段からの信頼関係や努力が大切であることを示唆する言葉でもあります。
「苦しい時の神頼み」の語源・由来
「苦しい時の神頼み」は、安土桃山時代から使われていた古いことわざで、もともとは「せつない時の神頼み」という形で広く用いられていました。
このことわざは、人が本当に窮地に陥り、自力ではどうにもならなくなったときに、普段は信仰と縁がない者でも神仏にすがろうとする様子を表しています。
やや皮肉な意味合いを含みながらも、「人間は苦しい時にはそうなるもの」という心理を容認する言葉でもあります。
また、「苦しい時」の部分は地域や時代によって「かなわぬ時」「ずつ(術)ない時」などの異なる表現もありましたが、現在では「苦しい時」が一般的に使われています。
さらに、「神頼み」は「神たたき」と言い換えられることもありますが、意味は変わりません。
このことわざは、歴史的にも長く使われ続けてきた言葉であり、人間の本質的な行動や心理を的確に捉えた表現として現在に至るまで広く知られています。
「苦しい時の神頼み」の使い方
「苦しい時の神頼み」の例文
- 「普段は全く勉強していなかったのに、試験前になった途端、神社で合格祈願をするなんて、まさに苦しい時の神頼みだね。」
- 「練習をサボっていた彼が、試合直前に『神様、勝たせてください!』と祈っているのを見て、まさに苦しい時の神頼みだと思ったよ。」
- 「ギリギリまで遊んでいたのに、締め切り前になって急に上司に助けを求めるなんて、苦しい時の神頼みもいいところだ。」
- 「チームが負けそうになると、急に神頼みをするサポーターがいるけど、苦しい時の神頼みってこういうことかもね。」
- 「全然準備をしていなかったのに、発表の直前になって『どうか上手くいきますように!』って祈ってるのは、苦しい時の神頼みだな。」
- 「いつもは『努力が大事』と言っているのに、お金がなくなったら急に宝くじに頼るのは、苦しい時の神頼みだね。」
- 「練習をサボっていたのに、マラソン本番で『神様、最後まで走らせてください!』なんて言ってるのは、苦しい時の神頼みだよ。」
文学作品などの用例
長井さん。あなたは神はどこにいるのか? といかにも不服そうに私をなじりましたね、物理学を専攻しているあなたに向かって申すのは失礼ですが、私がもし、空気はどこにあるか? と反問したらあなたは何と答えます?
空気の存在に気づかず、したがってその恩恵を感ずることなく一生を終わる人も少なくないでしょう。生き埋めになったか、おぼれかけたか、あるいは汽車がトンネルの中で立ち往生したというような経験をもたぬ人々はおそらく空気について考える機会があまりないでしょう。そんな呼吸困難の体験をした人は、苦しい時の神頼みと同じ心境を知っています。(『ロザリオの鎖』永井隆)
「苦しい時の神頼み」の類義語・似たことわざ
- 恐ろしい時の念仏
- 悲しい時の神祈り
- 叶わぬ時の神頼み
- 術なき時の神頼み
- 切ない時の神頼み
- 人窮すれば天を呼ぶ
- 藁にも縋る
- 溺れる者は藁をも掴む
「苦しい時の神頼み」の対義語
- 日頃の信心
- 常日頃の行い
「苦しい時の神頼み」の注意点
- 普段頼らないものに突然すがる場面で使う
→ いつも信仰心がある人や、普段から努力している人が助けを求める場合には適さない。
(例:✕「毎日お参りしている彼が、大事な試験前に神社で祈った。まさに苦しい時の神頼みだね。」→ 普段から信仰しているなら不適切) - 皮肉や批判として受け取られることがある
→ 相手が真剣に願っている場面で使うと、冷たく聞こえることがあるので注意。
(例:✕「助けてくれって?普段は知らん顔してるくせに、苦しい時の神頼みだね。」→ 相手を責めるように聞こえる) - 冗談っぽく使う場合は場面を選ぶ
→ 友人同士の軽い会話では問題ないが、ビジネスやフォーマルな場面では適さない。
(例:✕「会社の業績が落ちてきたから、社長が神社にお参りしてるよ。苦しい時の神頼みだね。」→ 会社の状況を軽視しているように聞こえる)
「苦しい時の神頼み」の英語表現
Danger past, God forgotten.
直訳:危険が過ぎれば、神を忘れる。
意味:人は困難なときには神に祈るが、危機を乗り越えるとその感謝を忘れてしまう、という意味のことわざ。危機を乗り越えた後でも、感謝や慎重さを忘れないことが大切だという教訓を含んでいる。
例文:He was praying every day when he was sick, but now that he’s better, he doesn’t even visit the church. Danger past, God forgotten.
(彼は病気のときは毎日祈っていたのに、元気になったら教会にも行かなくなった。危険が過ぎれば、神を忘れるものだ。)
Once on shore, we pray no more.
直訳:岸に着けば、もう祈らない。
意味:人は困難なときには熱心に祈るが、安全な状況になるとすぐに信仰を忘れてしまう、という意味のことわざ。「Danger past, God forgotten」と似た意味を持ち、人間の利己的な一面を指摘している。
例文:During the storm, they promised to change their ways, but now that they’re safe, they’ve gone back to their old habits. Once on shore, we pray no more.
(嵐のときは改心すると誓っていたのに、安全になったら元の生活に戻ってしまった。岸に着けば、もう祈らない。)