【ことわざ】
思うに別れて思わぬに添う
【読み方】
おもうにわかれておもわぬにそう
【意味】
好きな人とは結ばれず、愛していない人と夫婦になること。男女の縁は、願った通りにならないということ。


【類義語】
・成るは厭なり思うは成らず(なるはいやなりおもうはならず)
・縁は異なもの味なもの(えんはいなものあじなもの)
【対義語】
・相思相愛(そうしそうあい)
「思うに別れて思わぬに添う」の語源・由来
「思うに別れて思わぬに添う」の「思う」は、ここでは、心の中で考えることではなく、人を恋しく思い、愛することを表します。「思うに」は「思う人に」、「思わぬに」は「思わぬ人に」の「人」を省いた言い方です。
「添う」には、あるもののそばに寄り添うという意味のほかに、男女が夫婦になるという意味があります。したがって、このことわざの「思わぬに添う」は、思いを寄せていなかった相手と結婚することを指します。
古い用例は、『全浙兵制考日本風土記(ぜんせつへいせいこうにほんふどき)』(1592年・明、侯継高撰)の巻五にあります。この書物の『日本風土記』は、『全浙兵制考』の付録としてまとめられた五巻の日本研究書で、日本の地理や風俗とともに、日本語の言葉や歌謡なども記しています。
そこには、「世の中は月にむら雲花に風和慕爾外界里和慕外業蘇」とあります。後半の「和慕爾外界里和慕外業蘇」は、日本語の音を漢字で写した表記で、「思うに別れ思わぬに添う」と読みます。
前半の「月にむら雲花に風」は、美しい月には雲がかかり、満開の花には散らす風が吹くように、よいことには邪魔が入りやすいという意味です。そのあとに「思うに別れ思わぬに添う」を続けることで、恋や結婚も願いどおりには運ばないという世のならいを、調子よく並べています。
この古い用例では、「別れて」ではなく、「別れ」という形が用いられています。「別れ」は動詞「別れる」の連用形で、そのまま次の「思わぬに添う」へと続きます。現在は、言葉のつながりをはっきりさせた「思うに別れて思わぬに添う」という形も用いられますが、意味は変わりません。
また、「思うに添わず思わぬに添う」という異なる形もあります。「思う人とは夫婦にならず、思っていない人とは夫婦になる」と、結婚できなかったことを「添わず」で直接表した言い方です。
このことわざは、単に片思いが実らないことだけを表すものではありません。愛する人とは別れ、その一方で、愛していなかった相手と結婚するという、二つの成り行きを対照させたところに特徴があります。そのため、恋愛一般ではなく、特に縁談や結婚が本人の望みとは反対に決まった場合に当てはまります。
このように、「思うに別れて思わぬに添う」は、少なくとも十六世紀末には記録されていた表現です。愛情と結婚が必ずしも一致せず、人の縁は思いどおりにならないという昔からの実感を、前半と後半の鮮やかな対照によって伝えることわざとして定着しました。
「思うに別れて思わぬに添う」の使い方




「思うに別れて思わぬに添う」の例文
- 娘は愛する人との仲を引き裂かれ、別の相手に嫁いだため、思うに別れて思わぬに添う身となった。
- 思うに別れて思わぬに添うという通り、二人は互いに慕いながらも夫婦にはなれなかった。
- その小説は、思うに別れて思わぬに添う女性の悲しみを静かに描いている。
- 祖母は昔の縁談を振り返り、思うに別れて思わぬに添うとは自分のことだと語った。
- 時代劇では、思うに別れて思わぬに添う若者たちの運命が物語の軸となっている。
- 本人の望まない縁談が進む場面に、思うに別れて思わぬに添うということわざが重なる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・侯継高撰、京都大学文学部国語学国文学研究室編『日本風土記―全浙兵制考』京都大学国文学会、1961年。























