【ことわざ】
思い面瘡思われ面皰
【読み方】
おもいおもくさおもわれにきび
【意味】
人を恋しく思うと面瘡ができ、人から恋しく思われると面皰ができるという昔の言い伝え。若い人のにきびを恋に結び付けて、からかうときに用いる。


「思い面瘡思われ面皰」の語源・由来
「思い面瘡思われ面皰」は、「思い」と「思われ」を、二つの古い肌の呼び名と組み合わせた表現です。「面瘡(おもくさ)」は、顔にできる瘡(かさ)、腫れ物、にきび、そばかすなどを指し、「面皰(にきび)」も、顔などにできるにきびを表します。
「面瘡」の「面」は、顔のことです。「くさ」は「かさ」、すなわち皮膚にできる腫れ物を表す古い言葉であるため、「面瘡」は、もともと顔にできた皮膚の異常を広く指していました。現在の「にきび」だけに限らず、その痕やそばかすまで含むこともありました。
「面瘡」という言葉は、経尊の『名語記(みょうごき)』(1275年・鎌倉時代成立)に、すでに出てきます。井原西鶴の『好色一代男(こうしょくいちだいおとこ)』(1682年・江戸時代前期)にも、「目のうちすずしく、おもくさしげく見えて」とあり、顔に面瘡が目立つ様子を表しています。
一方、「面皰」は、このことわざでは「にきび」と読みます。その古い形である「にきみ」は、源順が編んだ『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(931〜938年ごろ成立、平安時代中期)に載っています。さらに、室町時代の古い『節用集(せつようしゅう)』には、現在と同じ「にきび」という形が出てきます。
ことわざ全体の古い記録としては、明治43年(1910年)刊の諺集に、現在とほぼ同じ形が載っています。そこでは、人を思うと顔に瘡ができ、人から思われると皰ができるという意味を示し、淡路(あわじ)に伝わることわざとして記しています。
この表現は、「思い」と「思われ」、「面瘡」と「面皰」を左右に並べた、調子のよい対句になっています。自分が誰かを恋しく思う場合と、誰かから恋しく思われる場合とを二つに分け、それぞれを顔に現れる吹き出物に結び付けることで、外からは分からない恋心を、目に見えるものとして表したのです。
にきびは思春期に多く、恋を意識し始める年ごろとも重なります。そのため、同じ時期に起こりやすい二つのことを結び付け、にきびを恋のしるしとして面白がる言い伝えが生まれたと考えられます。実際のにきびは、皮脂の分泌が増え、毛穴が詰まって皮脂がたまることから始まり、恋をしたことや、誰かに思われたことが直接の原因ではありません。
現在では、若い人のにきびを見て、恋をしているのではないか、誰かから好かれているのではないかと、冗談めかしてからかう言葉として用いられます。ただし、肌の悩みは本人にとってつらいこともあるため、相手を傷つけないよう、心を配って使うことが大切です。
「思い面瘡思われ面皰」の使い方




「思い面瘡思われ面皰」の例文
- 祖母は頬のにきびを見て思い面瘡思われ面皰と笑い、若いころの思い出を語り始めた。
- 思い面瘡思われ面皰という昔の言い方を、国語の授業で恋にまつわる言い伝えとして学んだ。
- 姉は思い面瘡思われ面皰とからかわれたが、肌の状態だけで恋心は決められないと答えた。
- 随筆家は、思い面瘡思われ面皰を、若者のにきびと恋を結び付けた昔のことわざとして紹介した。
- 思い面瘡思われ面皰という言葉には、目に見えない恋心を顔の変化で知ろうとする発想が表れている。
- 友人の外見を思い面瘡思われ面皰と冷やかすのは、相手を傷つけないよう慎むべきだ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂書店、1910年。
・公益社団法人日本皮膚科学会『皮膚科Q&A にきび』。
・経尊『名語記』1275年。
・源順『和名類聚抄』931〜938年ごろ成立。
・井原西鶴『好色一代男』1682年。























