【ことわざ】
旨い物食わす人に油断すな
【読み方】
うまいものくわすひとにゆだんすな
【意味】
人の歓心を買おうとしてごちそうをする者には、何か下心があることが多いので、気を許してはいけないという戒め。


【英語】
・There is no such thing as a free lunch(ただで得られるものはない)
・Beware of Greeks bearing gifts(贈り物を持ってくる相手にも用心せよ)
【類義語】
・旨い事は二度考えよ(うまいことはにどかんがえよ)
「旨い物食わす人に油断すな」の語源・由来
「旨い物食わす人に油断すな」は、ごちそうやうまい話で相手の気分をよくさせる人には、何か求めるものが隠れていることがある、という生活上の用心を表したことわざです。人の歓心を買おうとする者には下心があるから注意せよ、という意味で伝わっています。
ここでいう「旨い物」は、まず味のよい食べ物を指します。「旨い」は、食物などの味がよいことを表すほか、物事が自分の望むとおりで都合がよいことも表す言葉です。
「食わす」は、飲食させる、食べさせるという意味を持つ言葉です。一方で、「食わす」には、人をだます、あざむく、はめるという意味もあり、「一杯食わす」のような言い方にもつながります。
そのため、このことわざでは、単に「おいしい物をごちそうしてくれる人」というだけでなく、相手をよい気分にさせてから、あとで何かを求める人への警戒が表されています。食べ物を与える親切が、必ずしも純粋な好意だけとは限らない、という見方が含まれています。
「歓心を買う」とは、人の気に入るように努めることをいいます。このことわざは、相手の心をよろこばせる行為そのものを否定するのではなく、そこに隠れた目的がある場合には気をつけるよう促しています。
「下心」は、心に隠しているたくらみごとを指します。親切にしてくれるのは下心があってのことだ、という言い方にもあるように、表向きの好意と内側の目的が一致しない場合に用いられます。
「油断」は、気をゆるすこと、たかをくくって注意を怠ることを表します。このことわざの「油断すな」は、相手のもてなしに安心しきらず、あとに続く頼みごとや要求を冷静に見きわめよ、という意味になります。
「馳走」は、食事を出すなどして客をもてなすこと、またそのための料理を指します。もてなしは本来、人を大切にする行為ですが、人間関係の中では、恩を着せたり、義理を感じさせたりする手段にもなりえます。
このことわざの考え方は、「ただのごちそう」に見えるものにも、あとから支払いとは別の負担が生まれることがある、という経験と結びついています。相手が食事代を出してくれたからといって、すぐに相手の言い分を受け入れる必要はない、という慎重さを教えています。
ただし、このことわざは、すべての親切を疑えという意味ではありません。親切に感謝しながらも、相手の目的やその後の話の流れをよく見て、軽々しく約束したり、断りにくい立場に追い込まれたりしないようにする戒めです。
現在でも、食事をおごられたあとで頼みごとをされる場面、特別な好条件を示されて契約や取引を迫られる場面、必要以上に親切にされる場面などに使われます。ごちそうや好意の表面だけを見ず、その裏にある意図まで落ち着いて考えることが、このことわざの要点です。
「旨い物食わす人に油断すな」の使い方




「旨い物食わす人に油断すな」の例文
- 先輩に高い昼食をおごられたあとで面倒な役を頼まれ、旨い物食わす人に油断すなという言葉を思い出した。
- 知らない人が親切に景品をくれると言って近づいてきたので、旨い物食わす人に油断すなと考えて距離を置いた。
- 取引先から過分な接待を受けた部長は、旨い物食わす人に油断すなと心得て、契約内容を慎重に確認した。
- 友人が急にごちそうしてくれると言い出したため、旨い物食わす人に油断すなと思い、理由をたずねた。
- 無料の体験会で豪華な食事まで出ると聞き、母は旨い物食わす人に油断すなと注意した。
- 相手の好意に感謝することは大切だが、旨い物食わす人に油断すなという戒めも忘れてはならない。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・Merriam-Webster.com Dictionary, Merriam-Webster.
・Dictionary.com Unabridged, Random House, 2023.























