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【憂え身に及びて後憂うるも及ばず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

憂え身に及びて後憂うるも及ばず

【故事成語】
憂え身に及びて後憂うるも及ばず

【読み方】
うれえみにおよびてのちうれうるもおよばず

【意味】
災いが身に降りかかってから心配しても、すでに手遅れであるということ。問題が起こる前に、用心し対策を立てるべきだという教え。

ことわざ博士
「憂え身に及びて後憂うるも及ばず」は、事が起きたあとの後悔よりも、未然に防ぐための準備を重んじる言葉だよ。
助手ねこ
災害、事故、病気、仕事上の失敗など、前もって対策できた事柄が手遅れになった場面で用いるニャン。

【英語】
・close the stable door after the horse has bolted(馬が逃げたあとで厩の戸を閉める、すなわち手遅れになってから対策する)

【類義語】
・後悔先に立たず(こうかいさきにたたず)

【対義語】
・備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)

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「憂え身に及びて後憂うるも及ばず」の故事

故事成語を深掘り

「憂え身に及びて後憂うるも及ばず」は、中国の古典にある「患至りて而る後に之を憂うれば、則ち及ぶこと無きのみ」という趣旨の言葉を、日本語の形に整えた表現です。これに直接対応する文は、『戦国策(せんごくさく)』(前漢末、劉向編)の「楚策一」にある「患至而後憂之、則無及已」です。

『戦国策』は、中国の戦国時代に諸国を説いて回った遊説家(ゆうぜいか)たちの弁論や策を集めた書物です。前漢の劉向が、宮中に伝わっていた諸書を整理し、国別にまとめて三十三編の書物としました。

この言葉が出てくるのは、蘇秦(そしん)が楚(そ)の威王(いおう)に合従(がっしょう)の策を説く場面です。合従とは、秦(しん)以外の国々が力を合わせ、強国である秦に対抗しようとする外交上の計画です。

蘇秦は、楚が広い領土と大軍をもつ強国であり、その力を生かせば秦に屈する必要はないと説きます。そして、楚が諸国との同盟を結ばなければ、秦は二手に軍を分けて攻め込み、楚の重要な都市である鄢(えん)や郢(えい)までも危うくなると警告しました。

そのうえで、蘇秦は「治之其未乱、為之其未有也。患至而後憂之、則無及已」と述べます。乱れが生じないうちに治め、災いがまだ形にならないうちに手を打たなければならず、災いが現れてから心配しても、もう間に合わないという意味です。

ここでいう「患」は、心の中の心配だけではなく、実際に身へ迫る災難や危険を指します。「憂之」は、その災いを心配し、どうにかしようとすることであり、「無及已」は、もはや手が届かず、間に合わないことを表しています。

蘇秦の言葉の前半は、『老子(ろうし)』第六十四章の「為之於未有、治之於未乱」とよく似ています。物事は、まだ起こっていないうちに処置し、乱れが生じないうちに治めるべきだという、予防と早期の対応を重んじる考え方です。

同じ一節は、司馬遷の歴史書『史記(しき)』(前漢、紀元前一世紀成立)の「蘇秦列伝」にも記されています。『史記』でも、蘇秦は楚王に対し、秦の攻撃によって国が危機に陥る前に、早く方針を決めるよう求めています。

また、『淮南子(えなんじ)』(前漢、紀元前二世紀、劉安編)の「人間訓(じんかんくん)」にも、「患至而後憂之」というよく似た言葉があります。そこでは、災いが来てから心配するのは、病人がすでに弱り切ってから名医を求めるようなものだとたとえています。

どれほど腕のよい医者でも、病気が手の施しようのない段階まで進んでしまえば、救えないことがあります。このたとえは、小さな異変を軽く見ず、まだ対処できるうちに行動することの大切さを、分かりやすく示しています。

日本語の「憂え身に及びて後憂うるも及ばず」では、「患至」を「憂え身に及びて」と表し、災いが自分の身に迫った状態をはっきりと示しています。「憂うる」は「憂う」の文語的な形で、心配する、思い悩むという意味です。

この故事成語は、起こってしまった失敗を悔やむだけの言葉ではありません。災いには前触れがあり、まだ小さいうちに気づいて手を打つことが、最も確かな備えになるという教えを伝えています。

「憂え身に及びて後憂うるも及ばず」の使い方

健太
理科の発表用に作った動画が、タブレットの故障で全部消えてしまったよ……。
ともこ
先生が昨日、家のパソコンにも保存しておこうと言っていたでしょう。憂え身に及びて後憂うるも及ばず、だね。
健太
消えてから心配しても、元には戻らないものね。予備を作っておけばよかった!
ともこ
次からは二か所に保存しよう。今回の失敗を、次の備えに生かそうね。
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「憂え身に及びて後憂うるも及ばず」の例文

例文
  • 台風が近づいてから屋根の傷みに気づいても遅く、憂え身に及びて後憂うるも及ばずとなりかねない。
  • 健康診断を長年受けず、病気が重くなってから慌てるのは、憂え身に及びて後憂うるも及ばずである。
  • 重要な資料の予備を残さなかったため、消失してから憂え身に及びて後憂うるも及ばずと悔やんだ。
  • 事故が起きてから安全設備を整えるのでは、憂え身に及びて後憂うるも及ばずというものだ。
  • 洪水への備えを怠れば、憂え身に及びて後憂うるも及ばずとなるため、町は早くから避難経路を整えた。
  • 会社は憂え身に及びて後憂うるも及ばずを教訓として、問題が小さいうちに報告する仕組みを設けた。

主な参考文献
・水沢利忠著『新釈漢文大系88 史記 八(列伝 一)』明治書院、1990年。
・楠山春樹著『新釈漢文大系62 淮南子 下』明治書院、1990年。
・劉向編『戦国策』前漢末。
・司馬遷『史記』前漢、紀元前一世紀。
・劉安編『淮南子』前漢、紀元前二世紀。
・『老子』。





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