目次
「噂をすれば影がさす」とは
読み方・意味
- ことわざ:噂をすれば影がさす
- 読み方:うわさをすればかげがさす
- 意味:噂をしていると、不思議とその人が現れるものだということ。
「噂をすれば影がさす」とは、ある人の噂をしていると、不思議にその人がそこへやって来るものだという意味です。
「影」は人影を意味し、「影がさす」はその姿が見えるという表現です。
日常会話では「噂をすれば影」と短縮されたり、「噂をすれば何とやら」とぼかして使われることが多いです。
現代では偶然の出来事として捉えられますが、昔は言葉に不思議な力があると信じられていたため、単なる偶然以上のものと考えられていました。
この考え方は、日本だけでなく世界各国にも見られます。
“噂をすれば…”の想像力


「最近、○○さん見かけないけど、どうしてるかな?」「そうだね、忙しすぎて体調をくずしたって聞いたけど、ちょっと心配だね」などと、知人の噂(うわさ)をしていると、たまたま当人がひょっこり姿をみせることがあります。
そんなとき、「噂をすれば影…だね」などとよく言います。おそらく、あなたもそんな場面に居合わせことがあるのではないでしょうか。
会話では、「噂をすれば影」だけで十分に通じますが、最後まできちんと言うと「噂をすれば影がさす」。「影がさす」は、ちらりと姿をあらわすということで、ちょっと古風だけれど味わいのある表現ですね。
当人にも話が聞こえそうだったら、当然、遠慮して「噂をすれば何とやら」と口をにごしたり、「噂をすれば…」でとどめたり、何も言わずに咳払いすることもあるでしょう。これは会話の自然なエチケットです。
いずれにせよ、ある人の噂話をしているときに、その当人があらわれるわけですから、誰でもちょっと驚き、なんだか少し不思議な気がします。
現代では、こうした場面での出会いは「偶然(ぐうぜん)」とか「たまたま」ととらえるのが普通でしょう。しかし、昔の人はことばに不思議な力があるせいと感じていました。他人のことを口にしたから、当人があらわれた、と半(なか)ば信じていたのです。
「半ば」というのは、噂をするたびに話題にした人がいつもあらわれるわけではないことは、昔の人でもわかっていたからです。「噂をすれば影がさす」と言い切る(断定する)のは、ことわざの好む表現法ですが、実際に100パーセントそうなるわけではありません。
にもかかわらず、ことわざは、そういう断定的な表現によって不思議な感じを強調し、あわせて、むやみに人のことをとやかく言うものではない、口はつつしまなくてはいけないことも暗に示しているようです。
ただし、ことわざは「人の口に戸はたてられない」ともいいます。相反する表現が共存するのは、ことわざの特徴の一つですが、「噂をすれば…」の場合、どのようにバランスをとっていたのか、時代をさかのぼって検討してみましょう。
このことわざが確認できる最も古い資料は16世紀末ごろの「北条氏直時分諺留」ということわざ集で、「うわさいえば主くる」とあります(わかりやすく現代の仮名づかいにし、一部漢字にしました)。 「主」は噂された当人ということですから、「噂をすれば影がさす」とほぼ同じ意味といってよいでしょう。
その後、関が原の戦いがあって、江戸時代の初期(17世紀)になると、俳句作りの参考書に挙げられたことわざのなかに、次のように似たような意味のものが出てきます。
「人ごと言えば筵(むしろ)しけ」 --人のことを言うと、その人がやってくるから、すわれるように筵をしけ、という意味。「筵しけ」は「目代(めしろ、見張り役)おけ」の誤りとする説もあります。
「そしれば影さす」--人のことを非難すると、その人がやってくる。
こうした例をみると、ことばには不思議な力があることは認めたうえで、噂話を強くとがめ禁止するというより、当人があらわれることがあるから注意し、用心するようにと助言しているようです。
さらに、江戸時代の後期(19世紀)になると、「呼ぶよりそしれ」という言い方もみられ、やはりことばの力を前提として認めながら、だったら、人を呼ぼうとするより悪口を言ったほうが早く来ると、発想を転換し、ユーモアをこめて表現しています。
昔の人(特にお年寄り)は、とかく説教じみたことばかり言うイメージがありますが、その想像力は意外に柔軟で、ユーモアや笑いも生活のなかに溶け込んでいたようです。(2026/2/02)
©2026 Yoshikatsu KITAMURA
【例文付き】「渡る世間に鬼はなし」の正しい使い方をシーン別に解説
「噂をすれば影がさす」の語源・由来
「噂をすれば影がさす」は、江戸時代後期の戯作者・十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』などに登場する表現が由来とされています。
十返舎一九は、庶民の暮らしや風俗をユーモアたっぷりに描いた作家で、歌舞伎好きとしても知られていました。
『東海道中膝栗毛』は、弥次郎兵衛と喜多八の珍道中を描いた作品で、その中に登場する言葉や言い回しが広く庶民に浸透しました。
「噂をすれば影がさす」も、そのような背景の中で生まれ、人々の間で使われるようになったと考えられます。
噂話に夢中になると、思わぬところで本人に聞かれるかもしれない、だからこそ慎むべきだという戒めの意味も込められています。
「噂をすれば影がさす」の使い方




「噂をすれば影がさす」の例文
- 食器をお盆にのせて降りてくると、階段の下でばあやが待ちうけていた。 「桃子さま、噂をすれば影で、さきほどお話いたしました姪の文江が、たったいま電話をかけて参りましてね。(草鹿 外吉『灰色の海』)
- 「課長、今日遅いな」と言った瞬間、ちょうど課長がオフィスに入ってきた。噂をすれば影がさすとはこのことだ。
- 授業中に先生のモノマネをしていたら、背後から本物の先生の声が聞こえた。噂をすれば影がさすとは恐ろしい。
- 昼休みに同僚の話をしていたら、まさにその同僚が部屋に入ってきた。噂をすれば影がさすとはこのことだ。
- 噂をすれば影がさすだね。こちらのご婦人と今まであなたの話で盛り上がっていたんだよ。
- 「あの子、あんなに細い体しているけど、大食いなのよ」とその場にいない女の子の事を話していたら、噂をすれば影がさすで、本人がひょっこり現れて少し気まずかった。
「噂をすれば影がさす」の類義語・似たことわざ
呼ぶより謗れ
人を招きよせるには、名を呼ぶよりもその人の悪口を言ったほうがいい。
謗れば影さす
人の悪口を言っていると、そこに当人がやって来るものだということ。
「噂をすれば影がさす」の英語表現
Talk of the devil, and he is sure to appear.
- 直訳: 悪魔の話をすると、必ず姿を現す
- 意味: ある人の噂をしていると、まるで呼ばれたかのようにその人が現れる、という意味のことわざ。日本語の「噂をすれば影がさす」と同じような表現。
- 例文:
We were just talking about John when he suddenly walked into the room. Talk of the devil, and he is sure to appear!
(ちょうどジョンの話をしていたら、彼が突然部屋に入ってきた。噂をすれば影がさす、だね!)
「噂をすれば影がさす」のクイズ問題

Q1
次の画像に表示される4択問題に答えよ。

Q2
「噂をすれば影がさす」の英語表現として、もっとも一般的に知られているものはどれでしょうか。
- Talk of the devil, and he is sure to appear.
- Scratch my back, and I’ll scratch yours.
- A drowning man will catch at a straw.

Q3
「噂をすれば影がさす」を日常会話で使うとき、よくある言い回しはどれでしょうか。
- 「あの子のことずっと気になってるんだよね、噂をすれば必然だよ」
- 「噂をすれば影、今まさに君のことを話していたよ」
- 「噂をすれば十人十色、影がかぶるって面白いね」

Q4
次のうち、「噂をすれば影がさす」の類義表現としてもっとも近いものはどれでしょうか。
- 「馬耳東風」
- 「呼ぶより謗(そし)れ」
- 「犬も歩けば棒に当たる」























