【ことわざ】
悪人あればこそ善人も顕れる
【読み方】
あくにんあればこそぜんにんもあらわれる
【意味】
悪人がいることで、善人のよさがいっそう目立つこと。転じて、対照するものがあるために、あるものの価値や特徴がはっきりすること。


【英語】
・Goodness stands out because evil exists.(悪があるから善が目立つ)
・Virtue shines brightest against vice.(悪と比べてこそ徳が際立つ)
・Contrast makes goodness visible.(対比によって善さが見えてくる)
【類義語】
・下手があるので上手が知れる(へたがあるのでじょうずがしれる)
・下手は上手の飾り物(へたはじょうずのかざりもの)
・馬鹿があって利口が引き立つ(ばかがあってりこうがひきたつ)
【対義語】
・麻に連るる蓬(あさにつるるよもぎ)
・善悪は友による(ぜんあくはともによる)
・朱に交われば赤くなる(しゅにまじわればあかくなる)
「悪人あればこそ善人も顕れる」の語源・由来
このことわざは、悪い人がいるからこそ善い人がはっきりする、という意味を、そのまま言い切った形のことわざです。とくに「あればこそ」という言い方が、あるものの存在によって別のものの価値が強く浮かび上がることを、力をこめて表しています。
終わりの「顕れる」は、隠れていたものが表に出て、はっきり分かることをいいます。古い言い方では「顕る」ともいい、このことわざにもその古風な響きが残っています。
今に伝わる書き方には、「悪人あればこそ善人も顕れる」のほか、「顕る」や「顕われる」などもあります。こうしたゆれ(書き方の違い)があっても、悪と善を対比して、善のよさがいっそう目立つという意味は変わりません。
このことわざは、だれか特定の人物の逸話をそのまま指すというより、善と悪を並べて考える中から生まれた教訓的な言い方と考えるのが自然です。言い回しそのものが説明的で、聞いた人がすぐ意味を受け取れる形になっているところにも、その性質がよく表れています。
似た考え方のことわざに、「下手があるので上手が知れる」があります。こちらも、比べる相手があるからこそ、すぐれたものがはっきりすると述べており、このことわざと発想がよく通っています。
つまり、このことわざのいちばん大事なところは、悪をほめることではありません。よい行いは、それと反対の行いが目の前にあるとき、いっそう人の目に残るという、人の受け止め方を述べたところに重みがあります。
そのため、使う場面も、だれかが意地悪をしたり、ずるをしたりしたあとで、別の人の親切さや正しさが強く伝わったときが中心です。反対に、ただ善人をほめるだけの場面ではなく、悪い行いとの対照がはっきりしているときに、このことわざはよく合います。
初出を一つに定めるのはむずかしいものの、このことわざが独立した形で広く伝わり、ことわざとして定着してきたことは確かです。短い中に意味がきちんと収まり、少し形を変えながらも同じ教えを保ってきたところに、ことわざらしい強さがあります。
また、「顕れる」という語を使っているため、善人のよさがただ存在するだけでなく、目に見える形で明らかになる感じが強まっています。ここには、善さは心の中だけにあるのではなく、行いによって外にはっきり出るものだという見方もこめられています。
こうして見ると、「悪人あればこそ善人も顕れる」は、特定の故事を語る言葉ではなく、対照によって価値が分かることを、善悪の例で言い切ったことわざだといえます。短い形ですが、人の行いを比べたときに何が本当に尊いかを考えさせる、よくできた言い回しです。
「悪人あればこそ善人も顕れる」の使い方




「悪人あればこそ善人も顕れる」の例文
- 学級会で友達の失敗をわざと広めた児童がいたため、困っている子をかばった委員長を見て、悪人あればこそ善人も顕れると思った。
- 落とし物を自分の物にしようとした人がいたからこそ、すぐ交番に届けた近所の人に、悪人あればこそ善人も顕れるという感じがした。
- 試合で反則ぎりぎりの行為を続ける選手がいたので、最後まで正々堂々と戦った主将に対して、悪人あればこそ善人も顕れると言われた。
- 責任を人になすりつけた社員がいたため、黙って後始末を引き受けた先輩に、悪人あればこそ善人も顕れるという評価が集まった。
- うその情報で人を混乱させる発信が広がるほど、事実を確かめて落ち着いて説明する人に、悪人あればこそ善人も顕れるという思いが向けられる。
- 祭りの寄付金を私的に使おうとした者がいた一方で、夜遅くまで会計を立て直した世話役に、悪人あればこそ善人も顕れると皆が感じた。























