【ことわざ】
青表紙を叩いた者にはかなわぬ
【読み方】
あおびょうしをたたいたものにはかなわぬ
【意味】
きちんと学問を積んだ人には、浅い知識や思いつきだけでは及ばないというたとえ。


「青表紙を叩いた者にはかなわぬ」の語源・由来
「青表紙」は、もともと青い色の表紙、特に濃い青の染め紙を用いた表紙を指す言葉です。『多聞院日記』(1581年・安土桃山時代)には、「青表帋の金剛経一巻巻本」とあり、この段階では、青色の表紙を持つ書物を表す言い方として用いられています。
近世になると、書物の表紙の色は、本の種類と結びつけて受け取られるようになりました。儒学関係の書物や経書には濃い青の表紙が多く用いられたため、「青表紙」は、四書・五経などの学問の書を指す言葉にもなりました。
経書を指す「青表紙」の早い用例として、『江戸談林十百韻(えどだんりんとっぴゃくいん)』(1675年・江戸時代前期)には、卜尺の句として「青表紙かさなる山を枕もと」とあります。枕元に本が重なる情景を詠んだ句ですが、次の句では語り物の稽古本の意味へ取りなされており、「青表紙」が当時、幾種類かの書物と、その表紙の色を通じて結びつく言葉であったこともうかがえます。
一方で、「青表紙」は、単に本を指すだけでなく、本に代表される学問や、学問を身につけた人へも意味を広げていきました。『当世真々乃川』(1785年・江戸時代後期)には、「物知りの事を青表紙となぐり」とあり、物知りな人を「青表紙」と呼ぶ用法が現れています。
また、『独寝』(1724年ごろ・江戸時代中期)には、「何事によらず、〈略〉青表紙にて行ものにあらず」とあり、「青表紙」は、書物の教えどおりに堅く振る舞うことや、融通のきかないやり方を表す言葉にもなっていました。学問の書を指す呼び名が、学問を重んじる人や、その振る舞いにまで広がったことが分かります。
「青表紙を叩いた者にはかなわぬ」は、「青表紙を叩いた者には適わぬ」と書く形でも収められ、「すぐれた昔の教えを記した書物を読み、きちんとした学問を身につけた人には及ばない」という意味を表します。ただし、このことわざそのものを生んだ特定の作品や逸話は伝わっていません。
ここでの「叩く」は、本を手で打つことではありません。「叩く」には、問う、たずねるという意味があり、このことわざでは、書物に当たって教えを学び、知識を確かなものにすることを表す言い方となっています。
このように、「青表紙を叩いた者にはかなわぬ」は、青い表紙の経書を読み込む姿をもとに、積み重ねた学問の強さを説くことわざです。思いつきだけでなく、書物に学び、根拠をもって考える人の力は侮れない、という教えを伝えています。
「青表紙を叩いた者にはかなわぬ」の使い方




「青表紙を叩いた者にはかなわぬ」の例文
- 図鑑や資料を読み込んだ姉の説明に、青表紙を叩いた者にはかなわぬと感心した。
- 付け焼き刃の知識で討論に臨んだが、青表紙を叩いた者にはかなわぬと悟った。
- 古典の問いに次々と答える祖父を見て、青表紙を叩いた者にはかなわぬと思った。
- 専門書を学んだ同僚が制度の根拠まで説明し、彼は青表紙を叩いた者にはかなわぬと認めた。
- 地域史の案内で詳しい背景まで語る先生に、参加者は青表紙を叩いた者にはかなわぬとうなずいた。
- 経験だけで議論しようとした父は、資料を読み込んだ母を前に、青表紙を叩いた者にはかなわぬと笑った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・尚学図書編『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・『江戸談林十百韻』1675年。























