【故事成語】
挙ぐることは鴻毛の如く、取ることは拾遺の如し
【読み方】
あぐることはこうもうのごとく、とることはしゅういのごとし
【意味】
物事をきわめてたやすく成しとげられることのたとえ。大きな事柄でも、軽い羽を持ち上げたり、落ちた物を拾ったりするほど容易である意。


【英語】
・a piece of cake(とても簡単なこと)
・as easy as pie(きわめてたやすいこと)
・child’s play(子どもの遊びのようにたやすいこと)
【類義語】
・朝飯前(あさめしまえ)
・造作もない(ぞうさもない)
・お安い御用(おやすいごよう)
【対義語】
・骨が折れる(ほねがおれる)
・一筋縄ではいかない(ひとすじなわではいかない)
・至難の業(しなんのわざ)
「挙ぐることは鴻毛の如く、取ることは拾遺の如し」の故事
この故事成語は、中国の歴史書『漢書(かんじょ)』に出てくる言葉をもとにしています。もとの形は「挙秦如鴻毛、取楚若拾遺」という一句です。
この言葉は、梅福という人が朝廷に意見を述べた上書の中に出てきます。梅福は、国の政治が乱れ、正しい意見が通りにくくなっていることを深く憂えていました。
そこで梅福は、漢の高祖が国を開いたころのことを引き合いに出します。すぐれた人を広く用いたため、大きな事業でも驚くほど進んだ、と述べたのです。
その流れの中で、秦を持ち上げることは鴻毛のようであり、楚を取ることは落ちた物を拾うようであった、というたとえが語られます。つまり、本来なら大変なはずのことでも、条件がそろえばたいへんたやすく進む、という意味です。
ここでいう「鴻毛」は、大きな鳥の軽い羽毛です。重さがほとんどないもののたとえとして使われています。
また、「拾遺」は、この場面では落ちている物を拾い上げることです。手間をかけずにすぐできる動作なので、たやすさを表すたとえになっています。
大切なのは、この言葉が、初めから小さな用事だけを指していたわけではないことです。国をめぐるような大きな争いであっても、力ある人材がそろい、勢いが十分なら、軽く片づくほどであると語っているのです。
そのため、この故事成語には、ただ簡単だというだけでなく、もとは大きくて重い仕事であっても、当人には負担なくできてしまう、という広がりがあります。人がむずかしいと思うことを、実力や経験の差で軽々とやりとげる場面に向く言葉です。
日本語では、原文の意味を受けながら、「挙ぐることは鴻毛の如く、取ることは拾遺の如し」という形で伝わりました。中国の原文にある秦や楚という国名をそのまま前に出さず、より広い場面に当てはめやすい言い方になっています。
現代では、日常会話で何度も聞く言葉というより、やや古風で格調のある表現です。文章やあいさつ、発表、古典に親しんだ人どうしの会話で使うと、言葉の重みが出やすくなります。
こうして見ると、この故事成語のよさは、軽い羽と落ちた物という身近な動作で、非常に大きなことのたやすさを言い表しているところにあります。大事業を小さな動きにたとえる鮮やかさがあるため、今も印象の強い故事成語として伝わっているのです。
「挙ぐることは鴻毛の如く、取ることは拾遺の如し」の使い方




「挙ぐることは鴻毛の如く、取ることは拾遺の如し」の例文
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