【ことわざ】
仇も情けも我が身より出る
【読み方】
あだもなさけもわがみよりでる
【意味】
人から受けるひどい仕打ちも思いやりも、もとは日ごろの自分の態度や行いから生じるものだということ。


【英語】
・You reap what you sow(自分の行いに応じた結果を受ける)
・What goes around comes around(人へのふるまいは巡って自分に返る)
【類義語】
・自業自得(じごうじとく)
・身から出た錆(みからでたさび)
・因果応報(いんがおうほう)
「仇も情けも我が身より出る」の語源・由来
「仇」は、今では「あだ」と読むのがふつうですが、古くは「あた」と清んで読まれ、自分に害を加えるもの、うらみ、危害などを表す言葉でした。「情け」は、他人をいたわる心や思いやりを表す言葉で、人と人との間の心づかいを示します。仇も情けも我が身より出るは、「うらみを受けること」と「思いやりを受けること」という反対の結果を並べ、どちらも自分のふるまいから生じるという形で成り立っています。
このことわざの根には、人への行いはやがて自分に返るという考えがあります。「情けは人の為ならず」は、人に親切にすれば、その親切がよい報いとなって自分にもどるという意味で使われます。また、自分の行為の報いを自分が受けるという考えは「自業自得」や「因果応報」とも重なります。ただし、仇も情けも我が身より出るは、よい報いだけでなく、人から受ける冷たい扱いまで含めて、自分の態度を見つめ直す点に特徴があります。
古い用例としては、近松門左衛門作の人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』(正徳5年・1715年、大坂竹本座初演)に、近い形の表現が出てきます。この作品は、明(みん)の再興をめざす和藤内を中心にした時代物で、初演後に長く上演され、歌舞伎にも移されました。
『国性爺合戦』には「仇も情も我身より出るとは、今こそ思ひ」という形が出てきます。ここでは、現在の形にある「情け」ではなく「情」が使われ、「我が身」も「我身」と書かれています。戦いや人間関係の中で受ける敵意や恩情を、自分の身から出たものとして受け止める言い方で、現在のことわざに近い発想を早い段階で示す例といえます。
のちに、この言い方は「仇も情けも我が身より出る」という形で用いられるようになり、「人から受けるひどい仕打ちも思いやりも、日ごろの自分の態度の結果である」という意味に定着しました。また、「仇も情けも我が身から出る」という形もあり、どちらも、外から返ってくる反応のもとは自分の行いにあるという同じ教えを表します。
現在の使い方では、相手を責める前に、自分の言葉づかい、約束の守り方、ふだんの親切や不親切を見直す場面でよく合います。人にやさしくすれば助けが返り、人を粗末にすれば冷たさが返ることもある、という穏やかな戒めとして、このことわざは今も生活の中で用いられます。
「仇も情けも我が身より出る」の使い方




「仇も情けも我が身より出る」の例文
- 友人に冷たい言い方を続けてきた結果、困ったときに助けが少なく、仇も情けも我が身より出ると反省した。
- 部活動で後輩をよく支えていたので、大会前に多くの人が協力してくれ、仇も情けも我が身より出ると感じた。
- 約束を何度も破って信頼を失ったのは、仇も情けも我が身より出るということだ。
- 家族に感謝を伝えずに不満ばかり言っていれば、仇も情けも我が身より出る結果になりやすい。
- 職場で日ごろから丁寧に対応していた人は、急な仕事でも助けてもらえ、仇も情けも我が身より出ることを実感した。
- 人間関係がうまくいかないときこそ、仇も情けも我が身より出ると考えて、自分の態度を見直す必要がある。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・現代言語研究会編『故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。
・近松門左衛門『国性爺合戦』1715年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.























