【ことわざ】
案ずるより産むが易し
【読み方】
あんずるよりうむがやすし
【意味】
物事は、あれこれ心配するより、実際にやってみると案外たやすいということ。


【英語】
・Don’t cross the bridge till you come to it.(その時が来る前から心配するな)
【類義語】
・当たって砕けろ(あたってくだけろ)
・思い立ったが吉日(おもいたったがきちじつ)
【対義語】
・言うは易く行うは難し(いうはやすくおこなうはかたし)
「案ずるより産むが易し」の語源・由来
「案ずるより産むが易し」の「案ずる」は、心配する、思い煩う、気遣うという意味です。古くは考えをめぐらす意味もありましたが、鎌倉時代以降、物事の成り行きを心配する心の動きを表す用法が広がり、江戸時代以降は「案じる」という形も使われるようになりました。
「産む」は、もとは文字どおり出産することを指します。このことわざは、お産を前にすると不安が大きくなるものの、実際に済んでみると心配していたほどではない場合がある、という生活上の実感をたとえにした言い方です。
ただし、この言葉は出産を軽く見るための表現ではありません。かつては「産は女の大厄」「産は女の命定め」などとも言い、出産には大きな危険が伴うものと受け止められていたため、不安な人を支える励ましの言葉として生まれた面があると考えられます。
古い出所としては、狂言『悪太郎(あくたろう)』に結びつけて伝えられています。『悪太郎』は、乱暴で大酒飲みの悪太郎が、思いがけず信仰の世界へ入っていく筋をもつ、江戸時代に作られた狂言です。
この言い方の古い用例として重要なのは、『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』(1832〜1833年・江戸時代後期、為永春水作)に出てくる形です。この作品は、丹次郎をめぐる女性たちの恋情を描いた人情本(にんじょうぼん)で、江戸後期の人情本を代表する作品の一つです。
その中には、「案(アン)じたより産(ウム)が易(ヤス)いと世の諺」という形が出てきます。ここでは、一時的な言い回しではなく、「世の諺」として、人々の間に知られたことわざであることが示されています。
この用例では、「案ずる」ではなく「案じたより」という形で表れています。また、後の用例には「案じるより生むが易うて」という形もあり、「案ずる」「案じる」、「産む」「生む」のように、表記や言い回しにゆれをもちながら使われてきたことが分かります。
現在よく使われる形には、「案ずるより産むが易し」と「案ずるより産むが易い」があります。「易し」は古風な言い切りで、「易い」は現代語としてよりなじみやすい形ですが、どちらも、心配するより実行してみれば案外たやすい、という同じ意味を表します。
近代以降の用例では、出産そのものではなく、物事に取りかかる前の不安を励ます比喩として使われることが多くなりました。たとえば、言葉が通じるか不安な場面や、思い切って事情を打ち明ける場面などで、「やってみれば何とかなる」という意味を表す言葉として使われています。
このように、「案ずるより産むが易し」は、もとの出産のたとえから、広く行動一般への励ましへと意味を広げたことわざです。心配をなくせというよりも、心配だけで足を止めず、実際に向き合ってみることの大切さを伝える言葉です。
「案ずるより産むが易し」の使い方




「案ずるより産むが易し」の例文
- 初めての司会で前日まで眠れなかったが、案ずるより産むが易しで本番は落ち着いて進行できた。
- 新しい習い事を始める前は不安だったが、案ずるより産むが易しで、参加してみるとすぐ友だちができた。
- 難しそうに見えた自由研究も、案ずるより産むが易しで、調べ始めると手順がはっきりしてきた。
- 取引先への説明を心配していたが、案ずるより産むが易しで、資料を見せるとすぐ理解してもらえた。
- 引っ越しの準備は大変だと思っていたが、案ずるより産むが易しで、家族で分担すると一日で片づいた。
- 友人に謝るのが怖かったが、案ずるより産むが易しで、素直に話すと相手もすぐに受け入れてくれた。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・為永春水『春色梅児誉美』1832〜1833年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢検 漢字ペディア』。























