【ことわざ】
朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬ
【読み方】
あさとびがなけばとなりしちけんいでがならぬ
【意味】
朝に鳶が鳴くと雨の前ぶれなので、外出を控えたほうがよいということ。


【英語】
・Red sky at morning, sailors take warning(朝焼けは悪天候の前ぶれ)
【類義語】
・朝鳶に蓑を着よ、夕鳶に笠を脱げ(あさとびにみのをきよ、ゆうとびにかさをぬげ)
・朝鳶に川渡りすな(あさとびにかわわたりすな)
・朝虹は雨夕虹は晴れ(あさにじはあめゆうにじははれ)
【対義語】
・鳶が朝から舞うは晴れ(とびがあさからまうははれ)
「朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬ」の語源・由来
朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬは、鳥や雲、風の様子から天気を読む「観天望気」の知恵から生まれたことわざです。天気予報が今ほど整っていなかった時代、人々は身近な自然の変化を細かく見て、農作業や漁、旅や用事の判断に役立てていました。
鳶は、空を大きく輪を描くように飛び、「ピーヒョロロ」と聞こえる声で鳴く鳥としてよく知られています。日本では水辺から山地まで広く見られるため、人々の生活の近くで観察されやすい鳥でした。
このことわざの中心にあるのは、「朝に鳶が鳴く」という一点です。朝の時点で鳶の声が目立つなら、空模様が下り坂になり、やがて雨になると見た経験則が、短い言い回しにまとめられました。
明治期にも、鳶と天気を結びつける言い伝えは記録されています。『尾三氣象會論』(1901年・明治34年、愛知県名古屋測候所編)には、尾張・三河地方の気象に関する言い伝えとして、朝に鳶が鳴けばその日に雨があり、夕方に鳴くのは晴れのしるしだという形の俚諺が見られます。
この形は、「朝鳶に蓑を着よ、夕鳶に笠を脱げ」とも通じます。蓑は雨を防ぐために身につける昔の雨具であり、笠も雨や日ざしを避ける道具です。つまり、朝の鳶は雨具を用意するしるし、夕方の鳶は雨具を外してよいしるしとして受け取られていました。
伊勢湾口付近の言い伝えにも、「朝鳶に蓑着よ、夕鳶に笠をぬげ」「朝鳶に川越するな」という近い形が残っています。朝方に鳶が鳴いた日は雨、夕方に鳴いた日は晴天という見方があり、雨で川が増える危険を避ける生活上の注意にも結びついていました。
「隣七軒」という部分は、近所の家々まで外へ出ないほどだ、という言い方です。七軒を厳密な数として読むより、まわりの家々一帯を思わせる表現として受け取ると分かりやすくなります。
「出でがならぬ」は、「出て行くわけにはいかない」「外へ出にくい」という古風な言い方です。このため全体では、朝の鳶の声を聞いたら、近所の人々も外出を見合わせるほど雨が心配される、という意味になります。
日本各地には、蟻の行列、蛙の声、猫が顔を洗うしぐさ、燕の飛ぶ高さなど、動物の動きから雨を読む天気俚諺が数多く伝えられてきました。こうした言い伝えは、科学的な予報そのものではなく、長い生活経験をもとにした注意の言葉として受け継がれてきたものです。
したがって、このことわざは「鳶が鳴いたら必ず雨が降る」と断定するための言葉ではありません。自然の小さな変化に気を配り、雨で困る用事や危険な外出を避けようとする、昔の人々の慎重な生活感覚を表しています。
現在の意味も、その流れを受けています。朝から鳶の声が聞こえるような日に、空模様の変化へ注意し、傘や雨具を用意することの大切さを伝えることわざとして用いられます。
「朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬ」の使い方




「朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬ」の例文
- 朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬというので、祖母は畑仕事を午前中で切り上げた。
- 朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬを思い出し、父は川沿いの遠出をやめて家の用事を先にすませた。
- 昼前から雨雲が広がり始め、朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬという言葉どおりになった。
- 朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬと聞き、登校前に折りたたみ傘をかばんへ入れた。
- 朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬは、自然の変化を見て外出を慎重にする知恵を表す。
- 漁に出る前の相談で、朝鳶が鳴けば隣七軒出でがならぬという古い言い伝えを年配の人が口にした。























