【慣用句】
顎で背中を掻く
【読み方】
あごでせなかをかく
【意味】
到底できないこと、実現しようのないことのたとえ。


【英語】
・be impossible(不可能である)
・be next to impossible(ほとんど不可能である)
・can’t be done(できる見込みがない)
【類義語】
・木に縁りて魚を求む(きによりてうおをもとむ)
・竿竹で星を打つ(さおだけでほしをうつ)
・大海を手で塞ぐ(たいかいをてでふさぐ)
【対義語】
・為せば成る(なせばなる)
・案ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし)
「顎で背中を掻く」の語源・由来
この慣用句のもとにあるのは、とても分かりやすい体の動きです。自分の顎で自分の背中を掻くことはできないので、その無理さをそのまま言葉にしたものです。
意味としては、到底不可能なこと、または実現できないことを表す言い方として伝えられています。はじめから条件が合っておらず、そのままでは成り立たない話に向くのが、この慣用句の大事なところです。
この言い方は、特定の人物の逸話や、中国古典の一場面から生まれたものではありません。むしろ、だれでもすぐ思い浮かべられる身体感覚を借りて、不可能さを強く示すところに特色があります。
背中は、自分の体の後ろにあり、手でも場所によっては届きにくいところです。それを顎で掻こうとするので、難しいを通りこして、はじめから成り立たない感じがすぐ伝わります。
そのため、この慣用句は、努力すれば何とか届くことにはあまり使いません。時間を少し足せば終わる、人数を少し増やせばできる、といった程度よりも、その条件のままでは無理だという場面にぴたりと合います。
この慣用句には、「顎で背中を掻くよう」という形もあります。文の中で、ようだ、ようなものだ、と続けて使うと、目の前の計画や申し出がどれほど無理かを、やわらかく、それでいてはっきり伝えられます。
文字の書き方には、「搔く」と「掻く」の違いがあります。どちらも意味は同じで、言い回しそのものは変わりません。
また、「顋で背中を掻く」と書く形も伝わっています。表記に違いはあっても、顎で背中を掻くことはできない、というたとえの中身は同じです。
似た意味の言い方には、星を打つ、大海を手で塞ぐ、木に登って魚を求める、などがあります。けれども「顎で背中を掻く」は、自分の体を使ったたとえなので、空や海を持ち出す言い方よりも、身近で具体的に無理さが伝わります。
この慣用句には、少しおかしみのある響きもあります。けれども、ふざけた言葉ではなく、計画の立て方や条件のそろえ方に無理があることを、角を立てすぎずに示すのに向いた言い方です。
まとめると、「顎で背中を掻く」は、成り立たない動作をそのままたとえにした慣用句です。だからこそ、短い言葉でも、ただ大変なだけではなく、そもそも無理だという意味が、はっきり伝わるのです。
「顎で背中を掻く」の使い方




「顎で背中を掻く」の例文
- 材料もそろわないまま今夜中に大道具を完成させるという計画は、顎で背中を掻くというほかない。
- 一人で全校生徒分の名札を書き上げるという話は、顎で背中を掻くような無理がある。
- 地図も道具も持たずに山道を夜のうちに抜けようとするのは、顎で背中を掻くようなものだ。
- 必要な許可が出ていないのに工事だけ先に終えようとするのは、顎で背中を掻くと言ってよい。
- 読み終えていない本で完ぺきな読書感想文を書こうとするのは、顎で背中を掻くに近い話だ。
- 人数も時間も足りないまま式の準備を全部やり切るのは、顎で背中を掻くとしか言いようがない。























