【ことわざ】
朝寝八石の損
【読み方】
あさねはちこくのそん
【意味】
朝寝坊をすると、健康や仕事の能率を損ない、大きな損失を招くという戒め。


【英語】
・He that lies long in bed, his estate feels it.(長く寝ている者は財産にも響く)
【類義語】
・朝寝朝酒は貧乏の元(あさねあさざけはびんぼうのもと)
・朝寝する者は貧乏性(あさねするものはびんぼうしょう)
・朝寝昼寝は貧乏の基(あさねひるねはびんぼうのもと)
【対義語】
・早起きは三文の徳(はやおきはさんもんのとく)
・朝起き千両(あさおきせんりょう)
・朝起きの家には福来たる(あさおきのいえにはふくきたる)
「朝寝八石の損」の語源・由来
「朝寝八石の損」は、朝寝坊をただ眠りすぎることとして見るのではなく、働く時間、学ぶ時間、人と約束を守る時間を失うこととして戒めたことわざです。「八石」は、実際に八石分を必ず失うという計算ではなく、損の大きさを強く示す言い方です。
「石」は「こく」と読み、米などの量を表す古い単位です。一石は十斗、百升に当たり、約百八十リットルに相当します。米で考えればたいへん大きな分量であり、「八石」となれば、日常の小さな損ではなく、暮らしに響くほどの大損を思わせます。
昔の日本では、米は食べ物であるだけでなく、年貢や家の収入、土地の力を表す基準にも深く関わっていました。そのため「石」という単位は、単なる量の名前にとどまらず、生活を支える価値の大きさを感じさせる言葉でもありました。
このことわざの中心には、「朝の時間は暮らしの土台である」という考え方があります。農作業では、涼しいうちに田畑へ出ることが大切で、商いでは、店を開く前の支度や客を迎える準備が一日の成り行きを左右しました。
江戸時代の商家では、早起きや時間を守ることが家の規律として重んじられました。商家の家訓には、「早起きは三文の徳」「朝寝八石の損」など、朝の時間を惜しんで勤勉に働くことを求める言葉が出てきます。
ここで大切なのは、「朝寝」が一回の寝坊だけを指すのではなく、だらしない生活のくせをも表している点です。朝の出だしが遅れると、仕事の始まりが遅れ、支度が乱れ、約束にも遅れやすくなります。その積み重ねが、やがて大きな損につながると考えられたのです。
早起きの価値を金銭や数量で表す言い方は、近世の町人の生活感覚ともよく合います。井原西鶴の『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』(1688年・貞享5年・江戸時代前期、井原西鶴著)にも、長者になる心得として「朝起き五両」など、早起きや家業への精勤を金額にたとえて示す発想が出てきます。
「朝寝八石の損」は、そのような発想の中で、早起きの利益をほめるだけでなく、反対に朝寝坊の損を強く戒める形で定着した表現と考えられます。「三文の徳」が小さくても確かな得を示すのに対して、「八石の損」は失うものの大きさを印象づけます。
また、このことわざは、健康面の戒めとしても受け取られてきました。朝遅くまで寝て生活の調子を乱すと、体の働きもにぶり、一日の仕事や勉強の能率も下がります。その意味で、金銭だけでなく、体調、時間、信用、機会を失うことまで含んだ言葉です。
現在では、米の量としての「石」を日常で使うことは少なくなりました。それでも「八石」という大きな単位を用いることで、朝の時間を軽く見てはいけないという考えは伝わります。
つまり「朝寝八石の損」は、昔の米の単位と、朝を大切にする生活の知恵が結びついたことわざです。朝の始まりを整えることが、その日の働きや学びを支えるという教えが、今の意味にもそのままつながっています。
「朝寝八石の損」の使い方




「朝寝八石の損」の例文
- 朝寝八石の損というように、朝の店開きに遅れたため、客が別の店へ流れてしまった。
- 祖母は朝寝八石の損を戒めとし、畑の水やりを涼しいうちに終える習慣を大切にしている。
- 試験当日の朝に寝坊して復習の時間を失い、朝寝八石の損を身にしみて感じた。
- 旅行の日に朝寝八石の損となり、早朝だけ見られる港の競りを見逃した。
- 新入社員は朝の会議に遅刻して重要な説明を聞けず、朝寝八石の損だと反省した。
- 地域清掃の日に朝寝八石の損をして、涼しい時間帯の作業に参加できなかった。























