【ことわざ】
顎振り三年
【読み方】
あごふりさんねん
【意味】
何事も身につくようになるまでには、長い年月がかかるということ。


【英語】
・Rome wasn’t built in a day.(大きなことは一日では成しとげられない)
・Mastery takes time.(一人前になるには時間がかかる)
・It takes years to learn a craft.(技を身につけるには年数がかかる)
【類義語】
・首振り三年ころ八年(くびふりさんねんころはちねん)
・石の上にも三年(いしのうえにもさんねん)
・商い三年(あきないさんねん)
【対義語】
・一を聞いて十を知る(いちをきいてじゅうをしる)
・門前の小僧習わぬ経を読む(もんぜんのこぞうならわぬきょうをよむ)
「顎振り三年」の語源・由来
このことわざは、もともと尺八の修練の厳しさから生まれた言い方です。尺八では、息の向きや強さが少し違うだけでも、音程や音色が変わります。
尺八は、竹に穴を開けたシンプルな楽器ですが、その分だけ奏者の体の使い方がそのまま音に出ます。吹き口にどう息を当てるか、唇と歌口の距離をどう取るかといった細かな加減が、とても大切になります。
その調節の中で、顎や首の動きは大きな役目を持ちます。首の角度を変えることで開口面積が変わり、音程を作るという説明も伝えられています。
こうした事情があるため、尺八では、ただ音が出れば終わりではありません。安定した音を出し、さらに思いどおりに音程を扱えるようになるまでには、長い時間がかかります。
そこで、顎を使った微妙な調節ができるようになるまでに三年かかる、と言い表したのが「顎振り三年」です。はじめは、尺八の修業の難しさをそのまま言う言葉でした。
このことわざと近い形に、「首振り三年ころ八年」という言い方があります。こちらは、首を振って音の加減ができるまでに三年、さらにころころとしたよい音色が出るまでに八年かかるという、もっと詳しい言い方です。
そのため、「顎振り三年」は、この長い言い方と並んで伝わる、短い形のことわざと見ると分かりやすいでしょう。実際に、「首振り三年」という別の言い方も伝わっています。
尺八は、外から見ると静かに吹いているようでも、音を作るためには息、唇、顎、首の調整が必要です。その苦労を知る人ほど、この言葉の重みを実感しやすいはずです。
やがて、この言い方は尺八の世界だけにとどまらなくなりました。今では、芸事、仕事、技術の習得など、何事でも身につくまでには年月が要るという意味で広く用いられます。
この広がりによって、「顎振り三年」は、特定の楽器の言い回しから、努力と熟練を語ることわざへ育っていきました。急いで結果を求めず、基礎を積み重ねる大切さを伝えるところに、このことわざの今の力があります。
つまり、「顎振り三年」の由来は、ある一人の逸話よりも、尺八の稽古そのものにあります。見た目は簡単そうでも、本当に身につけるには長い時間がかかるという実感が、そのままことわざになったのです。
「顎振り三年」の使い方




「顎振り三年」の例文
- 書道の細い線を安定して引くには時間がかかるので、先生は顎振り三年と言って生徒を励ました。
- 新入部員が変化球をすぐ覚えたがっても、監督は顎振り三年として基礎の投げ込みを大切にした。
- だしの取り方から覚える料理人の修業は、まさに顎振り三年である。
- 新しい職場の仕事を一か月で完璧にこなそうとするのは無理で、顎振り三年の覚悟が要る。
- 尺八の師匠は、音の揺れを思うように操るには顎振り三年だと弟子に話した。
- 外国語の発音を自然に身につけるには、顎振り三年と考えて毎日続けるほかない。























