【慣用句】
上げ膳据え膳
【読み方】
あげぜんすえぜん
【意味】
自分では何もしないで、食事の支度や後片づけを人にしてもらい、転じて何から何まで世話を受けて楽をすること。


【英語】
・not have to lift a finger(自分では何もしなくてよい)
・be waited on hand and foot(何から何まで世話をしてもらう)
【類義語】
・至れり尽くせり(いたれりつくせり)
・おんぶにだっこ(おんぶにだっこ)
・左団扇(ひだりうちわ)
【対義語】
・自給自足(じきゅうじそく)
・独立独歩(どくりつどっぽ)
・自力更生(じりきこうせい)
「上げ膳据え膳」の語源・由来
日本では、今のような大きな食卓が広く行き渡る前、一人ひとりの前に食膳を置いて食事をする形が長く続きました。そうした暮らしの中から、「上げ膳」や「据え膳」という言い方が育っていきました。
この慣用句の土台になる「膳を据える」という言い方は、室町時代の『今川大双紙(いまがわおおぞうし)』に出てきます。そこでは、食膳を人の前に置くという、文字どおりの動作が書かれています。
名詞の「据膳」も古く、1638年(寛永15年・江戸時代前期)の『高野山文書(こうやさんもんじょ)』にその例が残っています。この段階では、すぐ食べられるように膳を整えて出すことを指していました。
その後、1729年(享保14年・江戸時代中期)の雑俳『十八公(じゅうはちこう)』では、「人を働かせて自分はなにも手を下さないこと」という意味がすでに出てきます。ここまで来ると、今の「上げ膳据え膳」にかなり近い意味合いになっています。
一方、「上げ膳」は、もともと食事が済んだあとに膳を取り下げることを指しました。そこから、自分でそうした片づけをしなくてもよい身分や境遇を表す言い方へと広がっていきます。
その広がりを示す例として、1907年(明治40年・明治時代)の『茗荷畠(みょうがばたけ)』には「あげ膳で喰はれる」という言い方が出てきます。ここでは、食事の世話を人に任せられる暮らしぶりが、はっきりと感じ取れます。
つまり、「据える」が食事の支度を表し、「上げる」が食後の片づけを表すので、この二つを重ねると、食事の始まりから終わりまでをすべて人にしてもらうことになります。「上げ膳据え膳」は、その全体をひと息で言い表す形になったのです。
そのため、意味は食事の場だけにとどまりません。家事や身の回りのことを何から何まで人にしてもらい、自分は手を出さずにすむあり方全体へと広がりました。
今の形そのものは、1963年(昭和38年・昭和時代)の小説『助左衛門四代記(すけざえもんよんだいき)』に出てきます。そこでは「上げ膳据え膳させていてよぉ」と使われており、暮らしぶりを表す言い方としてすでに通っていたことが分かります。
現代では、旅館で世話を受けるような文字どおりの場面にも、家で何もしないで人に頼りきるような比ゆ的な場面にも使われます。のんびり休めるありがたい状態を表すこともあれば、人任せのあり方を軽くたしなめる響きをもつこともあります。
この慣用句には、日本の食事の所作がそのまま生きています。食べる前に膳を出し、食べ終われば膳を下げるという一連の世話から、今日の「何から何まで人にしてもらう」という意味が育ったのです。
「上げ膳据え膳」の使い方




「上げ膳据え膳」の例文
- 修学旅行の旅館では、上げ膳据え膳で温かい夕食が運ばれてきた。
- 祖父母の家に行くと、母まで上げ膳据え膳でゆっくりしていた。
- 出産後しばらくは、上げ膳据え膳で体を休めるように勧められた。
- 新人のうちから上げ膳据え膳に慣れると、自分で動く力が育ちにくい。
- 温泉宿で上げ膳据え膳の一日を過ごし、家族みんながくつろいだ。
- 家で上げ膳据え膳に慣れすぎると、一人暮らしを始めたときに困る。























