【ことわざ】
甘い粉にむせる
【読み方】
あまいこにむせる
【意味】
好都合な出来事に出会い、喜びすぎたために注意を失って失敗すること。


【類義語】
・好事魔多し(こうじまおおし)
・油断大敵(ゆだんたいてき)
【対義語】
・勝って兜の緒を締めよ(かってかぶとのおをしめよ)
「甘い粉にむせる」の語源・由来
「甘い粉にむせる」は、甘いものを前にしたときの喜びと、粉で思わずむせる身体の感覚を結びつけたことわざです。「好都合な出来事にあい、喜びのあまり失敗すること」を表し、「甘い粉」が人を喜ばせ、油断させるところから来た表現として伝わります。
「粉」は「こ」と読み、固体が砕けて細かくなったものを指します。現代では「こな」が一般的ですが、「こ」は「小麦粉」「片栗粉」などの複合語や、「身を粉にする」のような言い方に残っています。
このことわざの「甘い」は、砂糖や蜜のような味だけを表しているのではありません。「甘い」には、耳に心地よく、ついうかうかとだまされそうになる、という心理的な意味もあります。うれしいことや都合のよいことを「甘い」ととらえる感覚が、このことわざの土台になっています。
一方、「むせる」は、飲食物や煙などが気管に入って、息がつまったり、せきこんだりすることをいいます。さらに、涙や強い感情でのどがふさがる意味にも広がっており、体のつまりから心のつまりへと意味が広がる言葉です。
つまり、「甘い粉」は人を喜ばせるもの、「むせる」はその喜びの中で思わぬつまずきを起こすことを表します。甘い粉を急に吸い込めば、よいもののはずなのに息がつまります。同じように、よい知らせや有利な状況に出会っても、浮かれて注意を失えば、かえって失敗してしまうという発想です。
このことわざは、成功や幸運を否定する言葉ではありません。むしろ、よいことが起こったときほど、心がゆるみやすいことを教えています。喜ぶことと、注意を保つことは別のものです。うれしさの勢いで大事な確認を忘れる、得な話に舞い上がって約束を読み落とす、ほめられて調子に乗り次の準備を怠る――そのような場面に、このことわざはよく当てはまります。
形としては短い表現ですが、甘さ・粉・むせるという身近な感覚がそろっているため、意味を思い浮かべやすいことわざです。甘いものほど人を油断させる、という見立てによって、幸運に出会ったときの心の危うさを、やさしく、しかし鋭く示しているといえます。
「甘い粉にむせる」の使い方




「甘い粉にむせる」の例文
- 合格通知に浮かれて入学手続きの期限を忘れ、甘い粉にむせることになった。
- 大口の注文が入ったと喜びすぎて数量を確認せず、甘い粉にむせる失敗をした。
- 試合に勝てそうだと思った瞬間に守備が乱れ、チームは甘い粉にむせる形で逆転された。
- 臨時収入に気をよくして高い買い物を重ねた父は、月末に甘い粉にむせる思いをした。
- 友人にほめられて準備を怠った発表は、まさに甘い粉にむせる結果となった。
- 利益の大きい話ほど条件をよく読むべきで、甘い粉にむせるような判断は避けたい。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・高橋書店編集部編『実用ことわざ新辞典 ポケット判』高橋書店、2015年。























