【ことわざ】
足下の鳥は逃げる
【読み方】
あしもとのとりはにげる
【意味】
身近なことや手元の物事をおろそかにしていると、思いがけず失うことのたとえ。


【英語】
・A bird in the hand is worth two in the bush(手にしているものを、より大きな望みのために失う危険を避けよ)
【類義語】
・油断大敵(ゆだんたいてき)
・灯台下暗し(とうだいもとくらし)
・近くて見えぬは睫(ちかくてみえぬはまつげ)
【対義語】
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)
「足下の鳥は逃げる」の語源・由来
このことわざは、足もとにいる鳥ならすぐ捕まえられると思って気をゆるめているうちに、その鳥が逃げてしまうという場面をもとにしたたとえです。近くにあるものほど「もう大丈夫」と思いやすく、かえって手抜かりが起こるという戒めが、この一文にこめられています。
「足下」は、もともと「足の下」「足もと」を表す言葉です。このことわざでは、手紙に用いる敬称としての「足下」ではなく、文字どおり自分の足の近く、つまり「すぐそば」の意味が中心になります。鳥が遠くの空や林にいるのではなく、足もとにいるという近さが、油断の理由として働いています。
「足もとにいる鳥」という発想は、別の古い言い方にも通じます。『素袍落(すおうおとし)』(室町時代末期〜近世初期の狂言)には、身近な所から急に鳥が立つような驚きを表す用例があり、また井原西鶴『世間胸算用(せけんむねさんよう)』(1692年・江戸時代前期、井原西鶴作)にも、急にあわただしく動き出すさまを「足もとから鳥のたつやうに」と表す用例があります。これらは「足下の鳥は逃げる」と同じ意味ではありませんが、足もとの鳥が急に動くという身近な経験が、たとえとして広く分かりやすかったことを示しています。
「足元から鳥が立つ」は、思いがけない出来事や急な行動を表す方向へ定着しました。一方、「足下の鳥は逃げる」は、鳥が「立つ」驚きよりも、鳥を「逃がす」失敗に重心を置く表現です。足もとにいるから自分のものだと思っていたのに、注意を怠ったために失うという筋道から、手近なことへの手抜かりを戒める意味へまとまったといえます。
そのため、現在の使い方では、遠くの大きな失敗よりも、すぐそばにある小さな機会や身近な関係を粗末にしたときに合います。近いからこそ早めに手を打つべきだという教えが、このことわざの中心です。
「足下の鳥は逃げる」の使い方




「足下の鳥は逃げる」の例文
- 近所の店だからいつでも行けると思っているうちに閉店し、足下の鳥は逃げると痛感した。
- 手元の応募用紙を後回しにして締め切りを過ぎたのは、足下の鳥は逃げるの好例だ。
- いつも協力してくれる友人への連絡を怠れば、足下の鳥は逃げることにもなりかねない。
- すぐ隣の部署の問題を軽く見ていたため、足下の鳥は逃げる形で大事な取引を失った。
- 家にある予備の電池を確認しなかったせいで停電時に困り、足下の鳥は逃げると思い知らされた。
- 身近な仕事ほど丁寧に扱わなければ、足下の鳥は逃げるという結果を招く。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・井原西鶴『世間胸算用』1692年。
・『素袍落』室町時代末期〜近世初期。
・Merriam-Webster, Incorporated『Merriam-Webster.com Dictionary』。























