【ことわざ】
あの声で蜥蜴食らうか時鳥
【読み方】
あのこえでとかげくらうかほととぎす
【意味】
声の美しい時鳥が蜥蜴や毛虫を食べるという意外さから、物事は見かけだけでは判断できない、というたとえ。


【英語】
・Don’t judge a book by its cover(外見だけで人や物事を判断してはいけない)
【類義語】
・人は見かけによらぬもの(ひとはみかけによらぬもの)
「あの声で蜥蜴食らうか時鳥」の語源・由来
このことわざのもとは、江戸時代前期の俳人、宝井其角の句です。其角ははじめ榎本姓を名のり、のちに宝井姓を用いた俳人で、松尾芭蕉の門人としても知られています。そのため、この句は宝井其角の句とも、榎本其角の句とも伝わります。
時鳥(ほととぎす)は、初夏に渡ってくる鳥で、古くから鳴き声の美しさによって親しまれてきました。『万葉集(まんようしゅう)』や『古今和歌集(こきんわかしゅう)』にも多く詠まれ、『枕草子(まくらのそうし)』でも、その声を待つ心が細やかに語られています。
其角の句は、そのような時鳥の優美な印象をふまえたうえで、「あの声で」と切り出し、そこへ「蜥蜴食らうか」と強い驚きを重ねています。美しい声で鳴く鳥が、気味の悪いものと受け取られやすい蜥蜴や毛虫を食べるという対照が、この句のおもしろさを作っています。
ここで大切なのは、時鳥をただ非難しているのではなく、外から見える美しさと、実際の生き方や性質とは必ずしも一致しない、という発見を短い言葉にしている点です。「声」は人が受ける美しい印象を表し、「蜥蜴を食らう」はその印象を裏切る意外な事実を表します。
其角の発句は、没後にも門人たちによってまとめられ、江戸時代中期には『五元集(ごげんしゅう)』(1747年・江戸時代中期、其角著、百万坊旨原編)のような句集として伝えられました。其角は江戸の俳諧(はいかい)を代表する俳人の一人であり、鋭い取り合わせや、日常の意外さをとらえる表現によって知られています。
のちにこの句は、鳥そのものを詠んだ句にとどまらず、人や物事について「見かけと中身が違う」と言うときのたとえとして使われるようになりました。現在のことわざとしては、美しい外見、やさしい声、上品なふるまいだけで相手を決めつけてはいけない、という意味につながっています。
「あの声で蜥蜴食らうか時鳥」の使い方




「あの声で蜥蜴食らうか時鳥」の例文
- あの声で蜥蜴食らうか時鳥とはよく言ったもので、穏やかな話し方の彼が会議では鋭い反対意見を述べた。
- 上品な包装の商品に粗末な中身が入っていて、まさにあの声で蜥蜴食らうか時鳥だった。
- あの声で蜥蜴食らうか時鳥で、物静かな先輩が試合になると誰よりも強気に攻めた。
- かわいらしい店名の店が、実は激辛料理で有名だと知り、あの声で蜥蜴食らうか時鳥と思った。
- 丁寧な言葉づかいの営業担当が、裏では乱暴な態度を取っていたとは、あの声で蜥蜴食らうか時鳥だ。
- あの声で蜥蜴食らうか時鳥というように、人や物事を最初の印象だけで決めつけてはいけない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・其角著、百万坊旨原編『五元集』前川六左衛門、1747年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』。























