【故事成語】
雨を冒して韮を剪る
【読み方】
あめをおかしてにらをきる
【意味】
友人の来訪を喜び、心をこめて手厚くもてなすこと。友情の厚さをいう場合にも用いる。


【英語】
・hospitality(客や訪問者を温かく迎える親切なもてなし)
・to welcome someone warmly(人を温かく迎える)
【類義語】
・歓待(かんたい)
・款接(かんせつ)
【対義語】
・冷遇(れいぐう)
・門前払い(もんぜんばらい)
「雨を冒して韮を剪る」の故事
この故事成語のもとには、中国後漢の郭林宗(かくりんそう)にまつわる話があります。郭林宗の家へ、ある夜、雨の中を友人が訪ねて来ました。林宗はその来訪を喜び、雨にぬれながら畑へ行き、韮を切って食べ物を作り、友人をもてなしたと伝わっています。
郭林宗は、『後漢書』では郭太と記され、字を林宗といい、太原界休の人でした。同じ記述には、学問を修め、洛陽で名を知られるようになったことも書かれており、当時の人々から重んじられた人物であったことが分かります。
故事の古い形は、『郭林宗別伝』に「林宗有友人,夜冒雨至,剪韭作炊餅食之」とあります。これは、林宗の友人が夜に雨を冒してやって来たので、林宗が韮を切り、炊餅を作って食べさせた、という意味です。
ここで大切なのは、立派な宴会を開いたことではありません。夜であり、雨でもあるという不便な状況の中で、林宗が友人の来訪を喜び、手近な韮を取りに行って、すぐに食事を用意した点です。そこに、相手を大切に思う心と、形だけでないまごころのもてなしが表れています。
後の中国語の説明では、「冒雨剪韭」は、郭林宗が自分の畑に韮を作っており、友人の范逵が夜に訪ねて来たとき、雨を冒して韮を切り、湯餅を作ってもてなした話として語られます。そして、この表現は友情が深いことのたとえとして用いられています。
さらに『幼学瓊林』の「花木類」には、「冒雨剪韭,郭林宗款友情殷」という形で出てきます。これは、郭林宗が友情の厚さをこめて友をもてなしたことを、短い対句の中に収めた表現です。故事が一つの整った言い方として覚えられ、後の人々に伝わっていったことがうかがえます。
日本語では、「雨を冒し韮を剪る」という訓み下しの形でも用いられます。「冒す」は困難を押して進むこと、「剪る」は切ることを表し、雨の中でも友人のために韮を切りに行く姿をそのまま言葉にしています。そこから、現在では、友人や来客を心から喜び、誠意をこめてもてなすという意味で使われるようになりました。
「雨を冒して韮を剪る」の使い方




「雨を冒して韮を剪る」の例文
- 友人が嵐の中を訪ねて来たので、祖母は雨を冒して韮を剪るように、温かい料理を作って迎えた。
- 遠方からの旧友を、父は雨を冒して韮を剪る思いで手厚くもてなした。
- 小さな宿の主人は、夜遅く来た旅人に雨を冒して韮を剪る気持ちで食事を出した。
- 雨を冒して韮を剪るというように、彼女は久しぶりに会う友人のため、疲れていても部屋を整えた。
- 友人の急な訪問を迷惑がらず、雨を冒して韮を剪るほどの心づくしで迎えた。
- チームメイトの来訪に、監督は雨を冒して韮を剪るようなもてなしをした。
主な参考文献
・日本漢字能力検定協会編『漢検 四字熟語辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2012年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・范曄『後漢書』5世紀。
・陳廷敬等奉勅撰『古今図書集成』1725年。
・『郭林宗別伝』。
・程允升原本、鄒聖脈増補『幼学故事瓊林』。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』.























