【ことわざ】
商い三年
【読み方】
あきないさんねん
【意味】
商売を始めて利益を上げるまでには三年ほどかかるので、それまでは辛抱せよという教え。


【類義語】
・商いは牛の涎(あきないはうしのよだれ)
「商い三年」の語源・由来
「商い」は、品物を仕入れて売ること、また、品物を売買することを指す言葉です。そのもとになる「商う(あきなう)」は、売り買いをすること、商売をすることを意味し、古くから用いられてきました。『日本書紀』(720年成立)の寛文版訓には、伊勢へ行って売買をして帰るという文脈で「あきなひ」の形が現れ、1281年の『窪尼御前御返事』にも、魚を売って長者となった人物について述べる中で、「あきなへて」という形が出てきます。
江戸時代に入ると、「商い」は、店や商人の具体的な営みを表す言葉として、作品にもたびたび現れます。『初庚申楽遊』(1679年・江戸時代前期)には、その年の「商い始め」を祝う場面があり、井原西鶴の『好色一代女(こうしょくいちだいおんな)』(1686年・江戸時代前期)には、店を構えて品物を売ることを表す「店商い」の用例があります。
商売では、大きな利益を急いで求めるよりも、辛抱して続けることが大切だという教えも、江戸時代の作品に現れています。北条団水の『日本新永代蔵(にっぽんしんえいたいぐら)』(1713年・江戸時代中期)は、町人の成功や失敗を題材にした浮世草子(うきよぞうし)で、その第二巻に「商は牛の涎(ヨダレ)、万事せかぬが大器なりと」とあります。
この「商は牛の涎」は、牛のよだれが細く長く垂れる姿にたとえて、商売も気長に辛抱して続け、利益を急いではならないという意味を表します。この言い方には、店を営む者にとって、商売はすぐに結果を得るものではなく、時間をかけて続けるものだという考え方が、はっきりと示されています。
「商い三年」は、このような商売の心得を、牛のよだれというたとえではなく、「三年」という年月によって言い表したことわざです。商売を始めたばかりのころは、客に店を知ってもらい、品物や売り方を工夫し、少しずつ信用を得ていかなければなりません。そのため、利益を上げるまでには三年ほどかかるものとして、まずは辛抱して続けよという教えを表します。
ここでいう「三年」は、三年たてば必ず利益が出るという約束を表すものではありません。成果がすぐには現れない商売において、短い期間だけであきらめず、店を育てるための時間を耐え抜くことの大切さを、分かりやすい区切りで示したものです。
このように、「商い三年」は、古くから続く「商い」という営みと、利益を急がず辛抱して続けるという商人の心得とが結びついた言葉です。新しい商売が思うように軌道に乗らないとき、すぐに見切りをつけず、信用と実績を積み重ねるよう励ますことわざとして用いられます。
「商い三年」の使い方




「商い三年」の例文
- 祖父は、新しい和菓子店を始めた父に、商い三年だから焦って店を閉めてはいけないと励ました。
- 開店して半年は客足が少なかったが、店主は商い三年を胸に、品ぞろえと接客を磨き続けた。
- 商い三年という通り、母の小さな花屋は、常連客に支えられて三年目から安定した利益を上げた。
- 商い三年を忘れてすぐに見切りをつければ、店の評判が広まる前に機会を失いかねない。
- 商店街の先輩は、若い店主に商い三年を説き、まず信用を積むことが大切だと諭した。
- 彼は商い三年の覚悟で修理工房を開き、少ない注文にも丁寧に応じて客を増やした。
主な参考文献
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・北条団水『日本新永代蔵』1713年。























