【慣用句】
飴を舐らせて口をむしる
【読み方】
あめをねぶらせてくちをむしる
【意味】
甘い言葉やうまい話で相手を喜ばせ、心の内や必要な言葉を引き出すこと。


【英語】
・to sweet-talk someone into doing something(甘い言葉で相手に何かをさせる)
・to coax an answer out of someone(相手から答えをうまく引き出す)
【類義語】
・鎌を掛ける(かまをかける)
・探りを入れる(さぐりをいれる)
・腹を探る(はらをさぐる)
【対義語】
・腹を割る(はらをわる)
・胸襟を開く(きょうきんをひらく)
「飴を舐らせて口をむしる」の語源・由来
「飴を舐らせて口をむしる」は、「飴を舐らせる」と「口をむしる」という二つの言い方が結びついて、相手を喜ばせて本音や情報を引き出す動きを表すようになった慣用句です。「舐らせる」は古く「ねぶらせる」と読み、飴の甘さで相手を気分よくさせることから、甘言で人をだましたり、勝負でわざと負けて相手を喜ばせたりする意味に広がりました。
この「飴」は、実際の菓子だけでなく、相手を油断させる甘い言葉や小さな利益を表す働きをもっています。「飴をしゃぶらせる」「飴をなめさせる」「飴をねぶらせる」などの形があり、相手を乗り気にさせるために、いったんよい気分にさせるという考え方が共通しています。
一方、「口をむしる」は、口そのものを傷つけることではありません。『三国伝記(さんごくでんき)』(1407年以後、1446年以前成立、沙弥玄棟編と伝わる)には、「我等が口をむしりて言を好む也」という用例があり、ここでの「口をむしる」は、誘いをかけて言葉を引き出す、問い落とすという意味で使われています。
近松門左衛門の浄瑠璃(じょうるり)『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)』(1711年、大坂竹本座初演)には、「子供に飴をねぶらせて口をむしるや罠の鳥」という形が出てきます。『冥途の飛脚』は、飛脚問屋の養子忠兵衛と遊女梅川をめぐる世話物で、この一節では、甘いもので相手を誘う動きと、相手から言葉を引き出す動きが、続いた表現として結びついています。
「飴を舐らせる」は、『卜養狂歌集(ぼくようきょうかしゅう)』(写本は1669年成立、1681年に版本出版、半井卜養の狂歌集)にも、相手をだます意味に通じる古い用例があります。これにより、江戸時代には、甘い言葉や都合のよい扱いで相手を喜ばせるという比喩が、すでに広く理解される言い方になっていたことが分かります。
このように、「飴を舐らせて口をむしる」は、甘いもので相手を喜ばせる具体的な行動から、甘言で相手を油断させる意味へ、さらにそのすきに本音や情報を引き出す意味へとつながっています。現在では、ただ質問するのではなく、ほめたり機嫌を取ったりして、相手がつい話すように仕向ける場面を表す慣用句として用いられます。
「飴を舐らせて口をむしる」の使い方




「飴を舐らせて口をむしる」の例文
- 彼は先輩をほめて機嫌をよくし、飴を舐らせて口をむしるように、次の企画の本音を聞き出した。
- 友人の持ち物を大げさにほめて買った店を聞くのは、飴を舐らせて口をむしるようなやり方だ。
- 相手の弱みを知るために親切そうに近づく態度は、飴を舐らせて口をむしると言われても仕方がない。
- 店員は客を気分よくさせながら予算を聞き出し、飴を舐らせて口をむしるように商談を進めた。
- 兄は弟をおだててゲームの作戦を聞き出し、飴を舐らせて口をむしることに成功した。
- 部長は取引先を持ち上げて本当の希望額を探り、飴を舐らせて口をむしるような交渉をした。
主な参考文献
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・半井卜養『卜養狂歌集』1681年。
・近松門左衛門作、祐田善雄校注『曽根崎心中・冥途の飛脚 他五篇』岩波書店、1977年。
・『三国伝記』1407年以後、1446年以前成立。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』.
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』.























