【ことわざ】
家売れば釘の価
【読み方】
いえうればくぎのあたい
【意味】
大金をかけて手に入れた家でも、売るときには釘代ほどの安値でしか売れないこと。


【類義語】
・家売らば縄の価(いえうらばなわのあたい)
「家売れば釘の価」の語源・由来
「家売れば釘の価」は、家を建てたり手に入れたりするために大きな費用をかけても、いざ売る段になると、その費用に釣り合わないほど安く扱われることを、釘の代金にたとえたことわざです。「釘」は、家の細かな部分にも価値があるという意味ではなく、家全体の売値が釘代ほどにまで下がるという、落差の大きさを表しています。
古い用例は、『毛吹草(けふきぐさ)』(寛永十五年〈1638年〉の序、江戸時代前期、松江重頼編)巻二に出てきます。そこには、「家うれば釘のあたひ」と記されています。現代の表記とは漢字や仮名の用い方が異なりますが、「家を売れば、釘の値ほどにしかならない」という言い回しの骨組みは、すでにこの形に備わっています。
『毛吹草』は、七巻五冊からなる俳諧(はいかい:言葉の取り合わせや機知を楽しむ文芸)の書物で、松江重頼が編んだものです。俳諧を作る際に役立つ言葉や題材の中には、当時の人々が日常の経験から語り伝えていた短い言い回しも含まれており、「家うれば釘のあたひ」も、そのような表現の一つとして伝わりました。
この用例が示しているのは、江戸時代前期の人々にとっても、家は建てるときには費用のかかる大切な財産でありながら、手放すときには十分な値にならないことがあった、という生活の実感です。大きなものに大金を注いでも、売却の場面では驚くほど安くなることがあるという苦い経験が、短く印象深いことわざにまとめられています。
このことわざには、いくつかの言い方があります。「売れば」に対して「売らば」、「釘」に対して「縄」を用いる形があり、「家売れば釘の値」「家売れば縄の値」「売り家は釘の代」も同じ意味を表します。表記や比べるものが少し変わっても、高い費用をかけた家が、売るときにはごく安値になるという考え方は共通しています。
また、このことわざは、家を安易に手放すことへの戒めにもつながります。古くなった家を売ってしまえばよいと簡単に考えても、実際には思うような値で売れず、手入れを重ねて住み続けるほうがよい場合もあるという、暮らしの知恵を含む言い方として受け継がれています。
したがって、「家売れば釘の価」は、どんな小さな物にも役立つ価値があるという意味ではありません。費用と手間をかけた家であっても、売る段になるとひどく安く扱われることがあるという、住まいと財産についての厳しい現実を表すことわざです。
「家売れば釘の価」の使い方




「家売れば釘の価」の例文
- 祖父は、長年手入れしてきた家の査定額を聞き、家売れば釘の価だとため息をついた。
- 多額の修繕費をかけた別荘も買い手がつかず、家売れば釘の価を思い知らされた。
- 古い町家を手放す相談の中で、父は家売れば釘の価なのだから慎重に決めようと言った。
- 住み替えを急いだ結果、予想よりはるかに低い値で売ることになり、家売れば釘の価となった。
- 工房を兼ねた家の売却額は改築費にも届かず、家売れば釘の価という言葉が身にしみた。
- 母は、家売れば釘の価にならないよう、古い家を売る前に活用の道も探すことにした。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松江重頼編、新村出校閲、竹内若校訂『毛吹草』岩波書店、1943年。
・川崎市立日本民家園『日本民家園だより vol.94』川崎市立日本民家園、2021年。























