【故事成語】
往を告げて来を知る
【読み方】
おうをつげてらいをしる
【意味】
推理力が鋭く、少し聞いただけで、その先のことまで察すること。物事の一部を聞いて、そこから続きや全体を理解することのたとえ。


【英語】
・be quick on the uptake(理解が早い)
【類義語】
・一を聞いて十を知る(いちをきいてじゅうをしる)
・一隅を挙げて三隅を反そうず(いちぐうをあげてさんぐうをかえそうず)
「往を告げて来を知る」の故事
「往を告げて来を知る」は、中国古典『論語(ろんご)』の「学而(がくじ)」に出てくる孔子の言葉にもとづきます。原文には「告諸往而知來者」とあり、すでに話したことを聞いて、まだ話していないことまで分かる者だ、という意味を表します。
『論語』は、中国の思想書で、二十編から成ります。孔子の没後、門人による孔子の言行記録を、儒家の一派が編集した書物で、四書の一つに数えられます。
この言葉の場面には、孔子の弟子である子貢が出てきます。子貢は、「貧しくてもへつらわず、富んでもおごらない人はどうでしょうか」と孔子にたずねます。
孔子は、それもよいが、貧しくても道を楽しみ、富んでも礼を好む人には及ばないと答えます。ここで孔子は、ただ悪いことをしない人よりも、さらに一歩進んで、よい生き方を自分から楽しみ実行する人を高く見ています。
その答えを聞いた子貢は、『詩』の「如切如磋,如琢如磨」という句を引きます。これは、切り、磨き、さらに細かく仕上げるように、人も学びによって磨かれていくという意味に通じる言葉です。
孔子はその返しを聞いて、子貢に「始めて与に詩を言うべきのみ」と言います。これは、これでようやく一緒に『詩』を語ることができる、というほめ言葉です。
続いて孔子は、子貢を「告諸往而知來者」と評します。つまり、こちらが前に話したことを示すと、子貢はその続きに当たる意味を察することができる、ということです。
古い注釈では、この場面を、孔子が「貧しくても道を楽しみ、富んでも礼を好む」と話したことに対して、子貢がすぐに『詩』の切磋琢磨の句を引き、孔子の考えを受け止めた場面として説明しています。子貢は、言われたことをただ聞くだけでなく、その意味を広げて理解したのです。
また、「往」はすでに言われたこと、「来」はまだ言われていないことを指すという解釈があります。このため、この故事成語は、過去と未来を占う言葉というより、聞いた一端から未説明の部分まで悟る力を表す言葉として受け取ると分かりやすくなります。
後には、この句を縮めた形として「告往知来」も用いられるようになりました。この形でも、一つを聞いて別のことまで理解する、原因や関係を見抜いて先を察する、という意味を表します。
日本語では、「往を告げて来を知る」という訓読の形で、理解力や推察力の鋭さを表す故事成語として伝わっています。少し説明しただけで要点をつかみ、次に何を考えるべきかまで分かる人をたたえるときに、ふさわしい言葉です。
「往を告げて来を知る」の使い方




「往を告げて来を知る」の例文
- 彼は往を告げて来を知る人で、少し説明しただけで企画のねらいを理解した。
- 先生の短い助言から解き方の続きを思いついた彼女は、まさに往を告げて来を知る生徒だった。
- 往を告げて来を知る力があれば、相手の話の要点を早くつかむことができる。
- 祖父は昔の経験を少し話すだけで、父は往を告げて来を知るように次の注意点を察した。
- 会議で往を告げて来を知る部長が、問題の先にある危険をすぐに指摘した。
- 往を告げて来を知るような理解の早さは、日ごろからよく考えて聞く習慣によって養われる。
主な参考文献
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・金谷治訳注『論語』岩波書店、1999年。
・『論語』。
・『詩経』。























