【故事成語】
往を彰らかにして来を察す
【読み方】
おうをあきらかにしてらいをさっす
【意味】
過去の出来事をよく明らかにし、それをもとに将来のことを推し量ること。歴史や経験を手がかりに、これからの変化を考えるたとえ。


【英語】
・study the past to foresee the future(過去を学び、未来を見通す)
【類義語】
・温故知新(おんこちしん)
・観往知来(かんおうちらい)
・数往知来(すうおうちらい)
【対義語】
・前車の轍を踏む(ぜんしゃのてつをふむ)
「往を彰らかにして来を察す」の故事
「往を彰らかにして来を察す」は、中国古典『易経(えききょう)』の「繋辞伝(けいじでん)」下に出てくる言葉にもとづきます。もとの形は「彰往而察來」で、過去を明らかにし、未来を察するという意味を表します。
『易経』は、中国の五経の一つに数えられる古典です。もとは占筮(せんぜい)、つまり物事の吉凶や変化を占うための書物で、六十四卦(ろくじゅうしけ)を通して自然と人生の変化を説きます。
『易経』は、卦辞(かじ)・爻辞(こうじ)を中心とする「経」の部分と、それを解釈する「伝」の部分から成ります。経は周代に、伝は周末から漢初にかけてしだいに形を整えたと考えられています。
「伝」のうち、彖伝(たんでん)、象伝(しょうでん)、文言伝(ぶんげんでん)、繋辞伝、説卦伝(せっかでん)、序卦伝、雑卦伝を合わせて「十翼(じゅうよく)」といいます。十翼は『易経』を解釈し、易の理論を述べる十篇です。
「繋辞伝」は、その十翼の一つで、上下二編から成ります。撰者ははっきりしませんが、古くは孔子の作と伝えられ、後にはその伝承を疑う考えも出ました。
「繋辞伝」下には、「夫易,彰往而察來,而微顯闡幽」とあります。これは、易というものは、過去のことを明らかにして未来を察し、かすかなものを明らかにし、奥深く隠れたものを開き示す、という趣旨です。
ここでいう「往」は、行くという意味だけでなく、「むかし」「以前」という意味をもちます。「来」は、来るという意味から、「この次の」「これから先」という意味にも使われます。
「彰」は、明らかにする、表すという意味をもつ字です。「察」は、よく見て詳しく調べること、また物事を推し量ることを表します。
つまり、この言葉は、過去と未来を別々に切り離して考えるものではありません。すでに起こった出来事の流れや原因をはっきりさせることで、これから起こることを考える、という知恵を述べています。
後には、漢字四字の形で「彰往察来」とも用いられるようになりました。この形も、以前の事跡を明らかにし、それをもとに未来の状況を考えるという意味です。
日本語では、「往を彰らかにして来を察す」という訓読の形で、歴史や経験を学ぶことの大切さを表す言葉として受け取られてきました。失敗や成功をよく見つめることが、次の判断を誤らないための手がかりになる、という考えにつながります。
「往を彰らかにして来を察す」の使い方




「往を彰らかにして来を察す」の例文
- 古い災害記録を読み解くことは、往を彰らかにして来を察すために欠かせない。
- 会社は過去の販売データを分析し、往を彰らかにして来を察す姿勢で新商品を企画した。
- 歴史の授業で戦争の原因を学ぶのは、往を彰らかにして来を察すためでもある。
- 去年の反省を生かして運動会の準備を進めるのは、往を彰らかにして来を察す行動だ。
- 地域の人口の変化を調べれば、往を彰らかにして来を察す手がかりになる。
- 失敗を忘れずに記録しておくことが、往を彰らかにして来を察す第一歩となる。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・株式会社平凡社『百科事典マイペディア』平凡社。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・国家教育研究院『成語典 修訂本』。
・『易経』。
・M. F. Rimington『Our Cavalry』Macmillan and Co., 1912年。























