【ことわざ】
河童に塩を誂える
【読み方】
かっぱにしおをあつらえる
【意味】
見当はずれの注文をすることのたとえ。海でとれる塩を、川にすむ河童に注文するという不釣り合いからいう。


【英語】
・go to the goat’s house for wool.(得られない相手や場所へ求めに行く)
【類義語】
・川獺に塩を誂える(かわうそにしおをあつらえる)
・畑に蛤(はたけにはまぐり)
・木に縁りて魚を求む(きによりてうおをもとむ)
「河童に塩を誂える」の語源・由来
「河童に塩を誂える」は、川にすむ河童に、海でとれる塩を注文するという見立てから生まれたことわざです。注文の相手と品物の性質がまったく合わないため、初めから見当違いな頼み方をしていることになります。
「誂える」は、頼むこと、また注文して物を作らせることを表す言葉です。古くは『日本書紀』(720年・奈良時代、舎人親王ら編)や『宇治拾遺物語』(1221年ごろ・鎌倉時代前期成立)にも関係する用例があり、相手に頼んで何かをさせる意味をもってきました。
このことわざでは、「誂える」は、ただ物を買うというよりも、相手に注文する、頼むという意味で働いています。つまり、塩を手に入れたい人が頼む相手をまちがえているところに、おかしみと戒めがあります。
河童は、水陸両生の想像上の動物で、頭に皿と呼ばれるくぼみがあり、水と深く結びついた存在として語られてきました。「かわわっぱ」の音変化から「かっぱ」になったとされ、川や水辺の妖怪として広く知られています。
一方、塩は、塩化ナトリウムを主成分とする塩辛い物質で、食生活の基本調味料です。海水や岩塩から作られるものとして説明され、製塩も海水や岩塩などから食塩を製造することを指します。
このため、川の生き物である河童に、海と結びつきやすい塩を注文するという取り合わせは、場所と相手を取り違えた頼み方になります。塩が必要なら、塩を作る人や塩を扱う店に頼むべきであって、川の河童に頼んでも目的には合いません。
同じ考え方をもつ言い方に、「河童に塩頼む」があります。これは、あてにならないことを表す言い方として伝わり、「河童に塩を誂える」と同じく、頼み先をまちがえることのむだを示しています。
また、「川獺に塩を誂える」という近い言い方もあります。川獺も水辺の動物であるため、塩を注文する相手としてふさわしくないという発想が、河童の場合とよく似ています。
「畑に蛤」は、畑で蛤を得ようとしても得られないことから、まったく見当違いなことや、不可能なことを望むたとえです。河童に塩を頼むことと同じく、求めるものと求める場所が合っていない点で近い意味をもちます。
「木に縁りて魚を求む」は、木に登って魚を取ろうとするように、方法を誤ると目的を達せられないことを表します。こちらは中国古典に由来する故事成語ですが、手段や相手を取り違えるという点で、「河童に塩を誂える」と通じます。
このことわざの面白さは、河童、川、塩、海という身近で分かりやすい対比にあります。むずかしい理屈を使わず、川にいる河童へ海の塩を注文するという一場面だけで、頼み先をまちがえる愚かさをはっきり示しています。
現在でも、専門外の人へ専門的な仕事を頼むときや、まったく扱っていない店へ品物を求めるときなどに使えます。相手の立場や得意なことを考えずに頼むと、いくら熱心に頼んでも目的に届かないという教えを伝えることわざです。
「河童に塩を誂える」の使い方




「河童に塩を誂える」の例文
- 絵の具を売っていない八百屋で水彩絵の具を探すのは、河童に塩を誂えるようなものだ。
- パソコンの修理を菓子店に頼むのは、河童に塩を誂えるに等しい。
- 専門外の人にむずかしい翻訳を頼んでも、河童に塩を誂える結果になりかねない。
- 水泳の相談を読書クラブに持ち込むのは、河童に塩を誂えるような頼み方だ。
- 店の種類を確かめずに注文すると、河童に塩を誂えることになる。
- 河童に塩を誂えるような依頼を避けるには、相手が何を扱っているかを先に調べる必要がある。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・旺文社編『成語林 故事ことわざ慣用句』旺文社、1992年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。























