【ことわざ】
魚心あれば水心
【読み方】
うおごころあればみずごころ
【意味】
相手が好意を示せば、自分も相手に好意を示す気になること。相手の出方しだいで、こちらの応じ方が決まること。


【英語】
・You scratch my back, and I’ll scratch yours.(助けてくれたら、こちらも助ける)
【類義語】
・水心あれば魚心(みずごころあればうおごころ)
・網心あれば魚心(あみごころあればうおごころ)
【対義語】
・恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
「魚心あれば水心」の語源・由来
「魚心あれば水心」は、魚と水の親しい関係を、人と人との心の応じ合いに重ねたことわざです。魚に水を慕う心があれば、水にもそれに応じる心がある、という見立てから、相手が好意を示せばこちらも好意を示すという意味になっています。
もとの形は、「魚心」「水心」という一語ずつのまとまりではなく、「魚、心あれば、水、心あり」と切って受け取る形だったと考えられます。つまり、魚に心があれば水にも心がある、という擬人化した言い方が、長く使われるうちに「うおごころ」「みずごころ」と読まれる形へ整っていきました。
「魚心」は、「魚、心あれば」という言い方が一つの言葉のように受け取られてできたものです。この変化は、二つの語が続くと後ろの語の頭がにごる連濁(れんだく)とも関わり、「魚心」「水心」という形が自然に聞こえるようになったと考えられます。
魚と水は、古くから切り離しにくい親しい関係を表す組み合わせとして用いられてきました。そのため、このことわざも、魚と水という身近なたとえを借りて、人間どうしの心の行き来を分かりやすく表す言葉として受け入れられたと考えられます。
近い形の古い用例としては、浮世草子(うきよぞうし)の『立身大福帳(りっしんだいふくちょう)』(1703年・元禄16年・江戸時代中期、唯楽軒撰)に、「水ごころあれば魚心あって」という形が出てきます。この作品は、大坂で元禄16年に刊行された近世の読み物です。
この用例では、現在よく使われる「魚心あれば水心」とは順序が逆になっています。しかし、相手から受けたもてなしや働きかけに、こちらも応じようとする意味の流れは同じです。
その後、浄瑠璃(じょうるり)の『関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)』(1767年・明和4年、近松半二ら合作)に、「魚心あれば水心あり」という形が出てきます。この作品は、明和4年8月に刊行された義太夫節(ぎだゆうぶし)の浄瑠璃で、作者連名として近松半二、三好松洛、竹田文吉、竹田小出、八民平七、竹本三郎兵衛の名が伝わっています。
『関取千両幟』では、力士どうしの勝負をめぐる緊張したやり取りの中で、この言葉が使われます。ここでは、ただ温かく親切を返すだけでなく、相手の出方を見て、こちらの応じ方を決めるという、かけひきの響きも加わっています。
このように、「魚心あれば水心」は、やさしい好意の応じ合いを表すだけでなく、相手の態度しだいでこちらの態度も変わるという、現実的な人づきあいの感覚も含むようになりました。そのため、親切な協力の場面にも、頼みごとや交渉の場面にも用いられます。
また、「水心あれば魚心」は「魚心あれば水心」を逆にした言い方として使われています。さらに「網心あれば魚心」という近い言い方もあり、相手の出方しだいでこちらにも応じ方がある、という同じ考えを表します。
現在の「魚心あれば水心」は、魚と水という穏やかな比喩を用いながら、相手の好意や態度にこちらも応じるという人間関係のあり方を表すことわざとして定着しています。中心にあるのは、一方だけでなく、互いの心が呼び合うという考えです。
「魚心あれば水心」の使い方




「魚心あれば水心」の例文
- 魚心あれば水心で、誠意をもって謝った彼に、友人も落ち着いて話し合いの席をつくった。
- 魚心あれば水心というように、日ごろから資料づくりを助けていた同僚が、急な発表の準備を手伝ってくれた。
- 魚心あれば水心で、商店街の清掃に進んで参加した店に、周囲の店も宣伝を手伝った。
- 魚心あれば水心と考え、祖父の庭仕事を手伝った兄に、祖父は自転車の修理を教えた。
- 魚心あれば水心で、交渉の相手が条件をゆずったため、こちらも納期を早める案を出した。
- 魚心あれば水心という言葉どおり、親切な案内を受けた客は、その店を家族にもすすめた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・唯楽軒『立身大福帳』1703年。
・近松半二ほか『関取千両幟』1767年。























